虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭中篇 その20



 祭りの開催期間的に、まだまだ俺が聖獣に会う可能性は残っている。
 問題は、森獣の中に顔を合わせづらい個体が居るということ。

 かつて、依頼されてこの大森林で害獣の駆除を行ったとき。
 その森獣──緑鹿とはその時に出会い……死闘を繰り広げた。

 まあ、それは一方的で、ただただ蹂躙されていただけなんですけど。
 だが落としたり、浄化したり、風で吹き飛ばしたりと……いろいろやっているからな。

 覚えているかどうか、そこが問題だ。
 もし覚えているなら、俺の行いは好ましく思えないこと……つまり、許可をもらうことがひどく難しくなってしまう。

 その確認が怖いと思い、俺は会うことを躊躇い通過を端折っていた。
 ……が、そう考えるのは止めて、あえてまた会うことを選んだわけだが。

「土壇場になると、やっぱり自分にできることを忘れるんだよな。昔からそうなんだよ、セットした組み合わせでサクサクできるものだけ選んで、いちいち面倒なコマンドは入力しない……とかな」

《これまでは代理で行うことで、露呈させてないでいた問題……ということですか?》

「そうなんだよな。どれもこれも便利で、だからこそ忘れてしまう。本当はその選択が少ないからこそ、逆に一つに絞りやすい。なのに俺は、その幅が広すぎるんだよな」

 職業、称号、アイテム……『プログレス』と多岐に渡る手段と術。
 どれも本来ならば、力があり過ぎるがゆえにしっかりとした制限が存在する。

 だというのに……俺が持つ真の力が、それらを無数に使うことを前提としているからなのか、どんどん数が増えてしまっていた。

「究極的に言えば、俺は:DIY:による生産特化だったはずなのにな。いつの間にかそのデメリットである虚弱性が売りになっているのはなんでなんだろう?」

《メリットを戦闘に直接反映できないからこそ、別の部分が出現した……そう認識されることがよろしいかと》

「そうだな…………まあ、というわけで、次からは可能な限りそれらに頼らず、アイテム一本でやってみるとしようか」

 初心に帰る、といった感じであろうか。
 ランダムで希望した結果とはいえ、虚弱であることはあくまでも副産物……本命で得たモノを使いこなすことが必要になった。

「【生産勇者】の強化生産と、:DIY:の万能生産、そして『死天』の死因アイテム。それらを上手く使い分けて、攻略する……今回はそういう感じでやってみるぞ」

《仰せの通りに、旦那様》

 これが上手くどうかは分からない。
 まあ、失敗してもその副産物が解決するのでいいだろう。

 ──次の日から、頑張るとしますか!


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