虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭中篇 その06


 さて、どうにか森亀を起こすことに成功したのだが……いったい何をすれば許可が貰えるのか。

 それを試練と称して聞いてみたが──

『特にないよー。うーん──ほいっと、これで許可が出たんじゃないの?』

 とのこと。
 まさかの一瞬で、俺は四つ目の資格を手にすることができた……なんだろうか、この虚脱感は。

『そうだー。加護が欲しいなら、何か面白い物が欲しいなー。特に決まりはないけどー、何か無いかなー?』

「……少々お待ちください、少し考えてみましょう」

 話の流れで加護云々にも触れられたが、面白い物と言われてもすぐには浮かばない。
 ここで『プログレス』を渡すのは即効性が無いだろうし、他に何か……あれがいいか。

「──こちらなど、いかがでしょうか?」

『ふわー、温かいねー』

「人工太陽を目指して創ってみたのですが、さして使い道が見つからず……せいぜいが日光浴をいつでも行えるというものにしかならなかった一品です」

 ふわりと浮かべた小さな球体が、高熱と光素を周囲に発している。
 稀に使う『ソルロン』チャージ用に試作してみたが、あちらには使えなかったのだ。

 なので今回、そんな不良在庫を押し付けてみることに。
 ……ちなみに登録すれば念じて使えるようにしてあるので、大型な貴方も問題なし!

『うーん……まあ、これでいいよー。よーしそれじゃあ、加護をあげちゃうよー』

「ありがとうございます、森獣様」

『加護の効果はー、お日様の光があるならー寝るだけでいろいろとー回復しやすくなるってものだよー。大事に使ってねー』

「……なかなかに強力な効果ですね」

 いろいろ回復、ここが肝だろう。
 すぐに[ステータス]を確認してみたが、そちらにも説明通りのテキストが記載されている……解釈の幅が広いんだよな。

《通常の身力値の回復速度向上だけでなく、状態異常の回復なども含まれるのであれば、ポーションが不要となりますね》

「寝るにしても、それを短時間にできるなら集団でボスに挑むときに役立てるだろう。この加護、本当に凄いよな」

 陽光がある場所に限られるものの、回復を自前かつノーコストで行えるのは便利だ。
 ポーションだと起き得るであろう中毒症状も、寝るだけならば意識しなくていい。

 また、寝て治った直後に起こしてもらえれば、効率的に戦闘も可能だろう。
 その時間が短ければ短いほど、継続的な戦闘を畳みかけることもできる。

「ありがとうございます。このお礼は、またいずれいたします」

『ううん、気にしなくていいよー。それじゃあまた寝るからー……おやすみー』

 そうして森亀は俺に加護を授け、再び地面に潜って眠りに着いた。
 残ったのはこれまでと変わらない光景、そして加護を得た俺だけ。

 ……不思議体験をしたとか言っても、全然おかしくないなこれ。


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