虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭中篇 その03



 ──結論から言おう、地中に居た。

「なんというか……実際にそうだと分かると奇妙な感じだ」

 立体的な[マップ]を調べること数十分。
 外側から内側に、確実な形で見つけるために歩き回っていたのだが……うん、森獣は内側も内側、というか中心に居た。

 微動だにせず、ただ空からの恵みである陽光を背中に浴びている。
 そうして無駄なエネルギーを使わずして、効率よく溜め込んでいるのだろう。 

「問題は、どうやって加護を貰えばいいかだよな……強引に起こすこともできるだろうけど、間違いなく抵抗されるだろうし」

 大きさは約5m、その巨体が少しでも動けばこの区画がどうなるかも分からない。
 だが、祭りの期間中である以上、完全に無視されるわけではないだろう。

「でもまあ、いちおう使えるモノは使っておこうか──『インストール』」

 再度『SEBAS』が用意してくれた設定画面を使い、この状況で使えそうな能力が無いかを探し始める。

 いくつかそれっぽい能力もあったので、さらにそれを吟味して……決めた。

「これだな──『ドリームピロー』」

 直訳すると夢枕、まさにこんな状況にピッタリな『プログレス』を使う。
 もちろん形状は枕型なそれを、まず森獣の頭があると思われる場所の真上に設置。

「さらに成長すれば、夢の中に入ることもできるみたいだけど……まあ、今回はもっと簡易なもので──“コネクトトーク”」

 同じ枕を共にした相手と、意識を繋げることができるというこの能力。
 夢枕な『プログレス』なので、当然寝ている相手も発動対象になっている。

《あーあー、聞こえますでしょうか?》

《……Zzz》

「こりゃあ、少しレベルを上げないとダメかもしれないな」

 熟睡状態で声が届かないとはいえ、すでに枕経由で意識は繋げた。
 なので条件を満たしたことになり、その次の能力を使うことができる。

「仕方ないか──“イン・ザ・ドリーム”」

 ある程度成長して、この能力の持ち主が発現させた能力。
 これと対となるスキルと共に、より夢への干渉を強めたようだ。

 先ほどまで明瞭だった意識が、能力発動と共に急激に薄れていく。
 こちらの能力はその名の通り、対象が観ている夢の中へ潜ることができる能力。

 まあ、相手の精神強度や抵抗力が強いと普通に失敗するのだが……。
 前段階として、意識を繋げることができていればその成功率が向上する。

「陽溜まりでのお昼寝……そう考えると、この時間も無意味じゃなくなるか」

 そして意識は完全に途切れ、そのまま夢の中へ……いったい、どんな世界なのやら。


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