虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
聖獣祭前篇 その03
この国でも一、二を争う有名人が好記録を叩き出したので、国民たちもまたそれに勝ちたいと全力で参加してくれた。
まあ、内容は胡散臭いとはいえそもそも無料でできる催しだからな。
サポートドールの誘導を受け、サンドバックを叩いてはその威力を数値化していた。
ちなみに【獣王】御一行は、すでに測定を終えてこの場を立ち去っている。
記録の方だが、全員が五ケタ越え……素晴らしい武闘派一家であった。
「さて、俺はそろそろお役御免だな。サポートドールだけでも営業できているし……この後は頼んでもいいか?」
「──お任せください、旦那様」
現れたのは『SEBAS』──の義体。
今回、俺が祭りを楽しんでいる間に営業をやってもらうために来てもらっている。
なお、体内には『SEBAS』の『プログレス』が埋め込まれており、その能力である『セバスチャン』を自在に発揮可能だ。
能力は前に語った通り、俺が指示をしたことに関する行動補正。
それは戦闘だけに留まらず、ありとあらゆる指示による行動が該当する。
《サポートは変わらず行えますので、旦那様のご質問にお答えすることも可能です》
「そうだな……俺って正直、『SEBAS』無しだと死んでばっかりだし。まあ、支えてもらっていても死んでばっかりだけど」
そもそも、俺のスタイルは死を前提としたものなのは言うまでもない。
忌避感もさしてないのだが、問題はその力に俺自身が扱えていないこと。
「……ここに居るのもアレだし、移動しながら相談してもいいか?」
《畏まりました。行ってらっしゃいませ》
「ああ、行ってくるよ」
この場に居る者たちが注目しているのは、催しであって俺ではない。
姿を隠し、『インビジブルクローク』付きの光学迷彩装置を使えば隠れられた。
彼らの嗅覚を誤魔化すことはできないが、そもそも祭りはいろんな臭いで溢れている。
わざわざ隠さずとも、意識して探さない限りは気づかれないだろう。
「改めて思うけど、俺って全然自分の力を使いこなせていないよな。結界とか、職業や称号の変更は『SEBAS』頼りだし。正直な意見が訊きたい」
《畏まりました──端的に申しますと、その通りかと。目的探しをしていた際も、その影響で旦那様の行動に制限が設けられていましたので》
「うぐっ……ご、ごもっともで」
俺のことをよく知る『SEBAS』であるため、問題点を即座に教えてくれる。
まあたしかに、あのときも言うだけ言っておいてできないことばかりだったな。
──せめてその解決策を、この賑やかムードの中で思いつけばいいのだが。
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