虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖獣祭前篇 その02



 ──『ダメージカウンター』。

 情報厨なヤツが欲した能力で、被与関わらずダメージを数値化できるという能力。
 まあ、ゲーム好きなら欲しくて堪らないような能力だが、使い道は多い。

「おっと、記録更新! 2534です!」

「っしゃあ!」

「さぁ、皆さんどんどん挑戦してみてくださいね! 自分のステータス、そして攻撃力がどれだけなのか身を以って知りましょう!」

 実際、自分の持つ攻撃の威力がどれくらいなのか把握している者は少ないだろう。
 サンドバックは防御力が0なので、完全に攻撃者の出した威力を数値化できる。

 まあ、能力として数値化するモノを防御力の計算済みで出すこともできるのだが、あくまでも能力の発現者基準なので、そこの設定変更が面倒なんだよな。

 特に今回、魔道具というステータス表記が異なるアイテムにくっつけているので、余計に面倒……なので初期設定の能力でやっているわけだ。

「さぁ、我こそはと思う方! ぜひとも試してみてください!」

「──なんだ、面白そうなことをしてんな」

「ええ、よろしければぜひ参加してみてください。好記録、期待していますよ」

「ハッ、いいぜ! なら、全力でぶち壊してやるよ!」

 名乗り出たのはうさ耳を生やした女性。
 祭りで浮かれる民衆よりも、必要だからか少々派手な衣装を身に纏っている。

 ──まあ、【獣王】だな。
 ヤーもいっしょに居るので、他の付き添いは子供たちだろうか?

「行くぜ──『ビーストオーブ』!」

 さて、そんな子供たちを放っておいて挑み始めた【獣王】が移植した『プログレス』の能力を発現させる。

 起動したそれは宝玉の形を成し、それを体内に取り込んだ。
 するとなんというか、オーラ的なモノが変化したように思えた。

《──『ビーストオーブ』は、指定した獣の性質を、宝玉を通じて発現させます。しかしながら、【獣王】はすでに職業能力でそれが可能なため、能力に加えて異なる獣の能力が使えるようになっています》

「なるほど……」

《現在、発現中の力は『金獅子』。どうやらこの能力、『覇獸』が事前に力を仕込むことで、【獣王】が魔物の力を宿すことを可能にしているようです》

 どうりで光のエフェクトを放っているわけだ……そういえば、だいぶ前にそれの燻製を食べさせられた気がするな。

 だが、どうやらそれでもしっかりと力は発揮するようで、【獣王】が勢いよく拳を振るうと──サンドバックが大きく吹き飛んだ。

「記録は……なんとなんと──13040でございます!」

「なんだ、凄いのか?」

「そうですね……亜竜程度であれば、一撃で倒れ伏しますね」

『おぉーーー!』

 サンプルで出した数値なのだが、意外と獣人受けしたようだ。
 参加する速度が上がっていく……さて、急いで人形たちに捌かせねば。


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