虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

竜の里 その09



 突然俺たちが訪れたのは、神竜の古巣。
 もちろん、そこには大人や『龍王』さんたちも居て……一度は警戒したが、すぐにそれは『龍王』さんによって解除された。

「孫娘よ! どうしてここに……」

「お爺様、お話がございます」

「……なるほど、『生者』の知恵じゃな。それで、お主らがここに来たその意図は?」

「それはこれから、ご説明いたします」

 いろいろと気にしていそうだが、まずは主張を聞いてくれるようだ。
 一つの場所に大人たちを集めたうえで、孫娘に話をさせる。

「今の時代、より多くの種族が繋がる現状で他の情報を断つのは困難です。これからについていくため、わたしたちは変わらねばなりません。そのために、この因習を変えるべきなのです」

「……それ自体は別に構わぬよ。竜とは力こそすべて、それゆえの試練じゃった。ならばそれを超えるだけの証明を行える、そう言いたいのじゃろう?」

「はい。少なくともわたしは、『生者』さんが提示した試練に価値を見出せました」

「──ここからは、私がご説明しましょう」

 最初の言葉は子供の代表者である孫娘が言うにしても、全部を任せるわけにはいかないので俺が代わりに出る。

 俺が何をしたいのか、それを示すことができる単純明快な方法。
 それは──その掌に載せた球体によって、すべてを物語らせることができる。

「ですが詳細な説明をする前に、私が何をするのか話しておきましょう。おそらく、これがもっとも最適な手段ですよ」

 大人たちはその存在に驚くが、『龍王』と孫娘は驚かない。
 後者は予め説明を受けていたからだが、前者はなんとなく察していたのだろう。


「──この島を、迷宮にします」


  ◆   □   ◆   □   ◆


 非難轟々、クレームの嵐である。
 竜族の始まりの地がどうのこうの、誇りがどうのこうのとお説教を喰らった。

 まあ、そういう苦情が出るかもしれないというのは予め孫娘から聞いていたが。
 しかしその解決方法も、竜らしいと思えるようなものを学んでいる。

「──『バトルラーニング』。さぁ、いつでも掛かってきてください」

 俺の挑発に乗って、大人の竜たちがいっせいに攻撃を仕掛けてきた。
 油断などはしない、『龍王』が全力で挑めと先に言っているからだ。

 だが、俺が『バトルラーニング』を使えばそんな警戒など関係ない。
 ありとあらゆる攻撃を、闘いを司る神々の技術も取り込んだ動きで捌いていく。

 竜魔法を使ってくる奴も居たが、すでにそれも対応できるようにしてある。
 ……ほら、竜魔法自体は『騎士王』の領土にいるドラゴンから教わったからな。

「そろそろ、こちらからも行かせていただきますよ──“オートカウンター”」

 自分から進み出れば、それに反応するように彼らは攻撃を行う。
 すると反撃用のプログラムが作動し、俺の体など気にせず最適解で攻撃を捌く。

 そのうえで、相手にダメージを与えられるように反撃も行う。
 直接大剣を振るってきた男には、それを躱して心臓に浸透頸を押し込んでいた。

 同様に、攻撃をすれば反撃をするという行動を何度も行えば、大人たちも理解する。
 自分たちでは手が届かない相手だと、しかもそれは孫娘の恩恵を受けてもなおのこと。

 ──そうして、反対する者は誰も居なくなる……そう思っていたんだけどな。


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