虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

竜の里 その08



 子供たちの代表者として、行動を抑制してくれていた『龍王』の孫娘と相談中。
 いかにして、今回の問題を上手く解決するかである。

「お互いに、妥協できる点が必要ですね」

「……何かお考えが?」

「そうですね。これまでいくつかの諍いを収めさせていただきましたが、今回の問題もどこかで折衷できるはずです。子供は外へ出ることを望み、大人はしっかりと力を蓄えることを望んでいる……そうですよね?」

「最低限、対人や対魔物戦ができることを証明しなければなりません。手段は問わず、それが可能であることを」

 竜は力を強く重んじているらしい。
 創作物でも竜は力の象徴なので、外道なこと以外であれば基本的に力を誇れば、主張を押し通すことができる。

「となれば……ふむ、一つだけいい方法が浮かびました。ただ、これはさまざまな場所から苦情が殺到するアイデアです。しかし、間違いなく問題は解決可能です」

「聞かせていただけませんか?」

「もちろんです。後ほど、改めて場を設けさせていただきいますが、よければ孫娘さんにもお手伝いをお願いしたいです」

 とりあえず、考えた方法を伝えてみる。
 最初は首を傾げていたが、だんだんと理解していく。

 いちおう『SEBAS』とも確認は済ませておいたので、ダメと言われるつもりは最初から無かった……とてもイイと言われたが、そこは話半分に受け取って説明し続けた。

「──以上が、私のご提案する方法です。いかがでしょうか?」

「決して不可能ではありません……しかし、本当に可能なのでしょうか?」

「伝手はございますので。危険性に関して、『龍王』さんといくつかご相談する必要がございますが……ご助力いただければ、外部に漏れだすことは無いでしょう」

「そうですね、お爺様であれば間違いなく。その覚悟を持つ者だけが、挑む……たしかにこれであれば、自己責任でしょうか」

 孫娘がここに居るのは、それが自己責任では済まないレベルで危険だからだ。
 しかし俺の提示する方法は、あくまでソイツ自身が責任を負う形になる。

 強くなり、外へ行きたい。
 そのための証明をするために、これまでは力合わせをしていた……が、俺はそれをより上手く行うアイデアを提示しただけだ。

「では、合意ということで?」

「……はい、よろしくお願いいたします」

「こちらこそ。この諍いを収めるため、共に頑張りましょう」

 彼女に転移鞘のことを話し、どこかに触れてもらう。
 鞘の端の方に触ったことを確認し──俺たちは共に転移を行った。


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