虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大量発生イベント その12



 空で花火が打ち上がり、その祭りの開催を盛り上げる。
 祭りも終盤、今日はテイムされたスライムたちによるコンテストが幕を開く。

「──で、なんでお前がここに?」

「いやいや、情報屋が居るのは当然だろ。むしろ、お前が居る方が……あー、いや、今は居て当然だったか」

 なぜか隣に来ていたタクマが、観客席から参加者を見ながら話す。
 そう、参加者の中には居るからな……我が最愛の娘が!

「ふっ、愚問だな。マイが出ているこのコンテストを、俺が見ないはずがないだろう!」

「ああ、分かった分かった。実際【調律姫】が参加するって情報は、誰でも掴めるレベルに広まっているからな。ただ、あんまり派手に応援しない方がいいぞ」

 まあ、タクマが言いたいことも分かる。
 大衆が集まる場所なので、当然ジンリがここに調査網を広めているだろう。

「いや、それでもだ……いいか、授業参観はともかく、運動会には行くものだ」

「……そんなシリアス顔で言うことでもないと思うんだが?」

「まあ、マイには予め絶対に目立つような応援はしないでほしいって言われてるからな。正確には俺がじゃなくて、ルリがだけど」

「どっちもどっちな気がするけど、俺がここに来ることも分かっていたのかもな。あっちは止める奴がいないし」

 タクマは必要とあらば、たとえ俺を殺してでもマイのことを考えてくれる。
 だが、ルリの所に居るのは宗教者……というか狂信者だからな。

 ルリが白と言えば、カラスだろうと白だと言うだろう。
 そんな彼女と彼女たちならば、全力でマイのことを応援していただろうし。

「なあタクマ、このコンテストについて何か分かっていることは?」

「情報はもう開示されてるぞ。まず、見た目と何ができるかをやってもらって、最後にその調味料の味を調べる」

「……いろいろとツッコミたいことはあるけど、今はいいや。それで、その三つの合計で順位を決めるのか?」

「その通りだ。ちなみに制限があるからすべてのスライムが等しくレベル1、合体済みの個体なら一体分のサイズになるらしい」

 スライムにはその大きさを自在にできる個体も居るが、進化派生の先によっては巨体を縮小化することができなくなる。

 今回はそれを封じるため、強制的に小さなサイズにしているようだな。

「これでだいたいの情報は言い終わったが、参加者の情報とかは要るか?」

「いや、マイが優勝するからいいや」

「……物凄い自信だな。まあ、俺もそう思うからいいんだけど」

 これは俺も調べていたことだが、ちゃんとテイムした主が施す補正をスライムたちは受けることができるらしい……うん、この時点で結果は見えたようなものだろうよ。


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