虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
大量発生イベント その05
そうして、どれだけの時が経過しただろうか……うん、そこまで経っていない。
さすがに俺も、スライムを乱獲するだけでそこまでの時間は必要としないのだ。
「まあ、対スライム系の[称号]が手に入るレベルには狩りまくったな」
経験値もそれなりに溜まっており、いくつかの職業に割り振っておいた。
ただ、今回は解放ではなく“職業強化”でスキルの常時起動ができるようにしていく。
「膨大過ぎて、スライム乱獲で解放できるのは見習い系だけだがな……たしか、カンストに必要な経験値量の百倍だったっけ?」
要するに、カンストするまでの苦労を百回分しなければ目的のモノは得られないのだ。
まあ、常駐化以外の強化にも経験値が必要なので、それ以上に必要なわけだが。
ちなみに、【勇者】の職業スキルはまだ常駐化できていない……が、『プログレス』を配っている間に得ていた経験値が割と多く、それ以外の強化はすべて済んでいる。
それらに要した経験値を足しても、それでもなお常駐化には遠く及ばない。
……うん、ちょっと遠すぎる理想を諦めてしまった、と言っても過言では無いな。
「さて、挨拶しておいた方がいいかな? でも、寝てるしな……仕方ない、とりあえずお土産だけ置いておけばいいか」
この地を統べる聖獣様は、とても寛容なので要らないとは思うが……まあ、親しき中にも礼儀ありというヤツだ。
置手紙なんて置いても読めないだろうし、録音の魔道具(壊れづらい+巨大)で伝言だけ残してお土産と一緒に残しておいた。
あとは転移を起動するだけ。
普通に帰るのも面倒臭かったので、この後やることを決めながら帰還するのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
大量のスライムを討伐したが、そのドロップアイテムはまだ調べていなかった。
「【見習い解体士】や【見習い剥取士】の効果で、ドロップ品は増えているのもあるけども……数が多すぎる」
なお、ドロップ品は魔物の心臓部分である魔核が共通のアイテム。
それに加えて、各スライムの色となっていた調味料がドロップしている。
「砂糖とか塩はともかく、加工品までバッチリだな……醤油にソースにラー油、味噌に酢に生クリーム」
数に結構な差があり、砂糖や塩、香辛料などは割と多めだ。
おそらく、加工品系のスライムは出現率が低めに設定されているのだろう。
「ちなみに一番少ないのは、一体しか出現しなかったカレー粉と焼き肉のタレだな……凄すぎないか、このドロップ品」
これさえあれば、どんな食材でも絶品になる……と言っても過言ではない二大神器。
独断と偏見ではあるが、それらの希少性が証明していると言えよう。
「端末経由でタクマに情報を送っておくか。もしかしたらルリがもうドロップさせているかもしれないけど、いちおう生産者としての鑑定情報も添えておけばいいか」
通常の鑑定よりも、細やかな情報を俺は知ることができる。
なのでそれを載せて、端末から情報を送信しておいた。
──さて、次は使い方を考えよう。
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