虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その19



 ふと上を仰ぎ見れば、綺麗な青空が広がっている。
 先ほどあった事柄の影響で、現在の俺は仰向けになってちょうど上を見ていた。

「まさか、開始エフェクトに飛ばされることになるとは……」

 エリアボスの現れるキューブに触れ、いつものように出てくるを待ったのだが……今回はそのボスの力もあって、飛び出してきた瞬間に暴風が吹き荒れたのだ。

 まあ、当然だが今の俺では細かな結界の設定もできないで吹き飛ばされる。
 戦闘ではないので、『バトルラーニング』も一時的にオフにしていたからな。

「再起動させて……“オートカウンター”も使っておくか。ああいう相手は、一瞬の隙を突かないといけないからな」

 改めて空を見る。
 青い空と白い雲が点在する視界に、突如黒い影が現れた。

 黒点は少しずつ大きくなると、実体を認識可能なレベルとなり──咆哮を上げる。

『キョェエエエエエエエエ!』

「名前は『ウォーイーグル』。うん、戦闘に長けた鷲ってことだな」

 矢筒から矢状の光を掴み取り、弓に番えて適当に放つ。
 ただそれだけでも、弓の神や達人から学習した技術が再現される。

『キョェエエッ!?』

「あっ、命中した。武技があれば、もっと大量にできたのにな──『二連射』」

 俺は武技を使えないが、武技で行われる動きをそっくりそのままなぞることは可能だ。
 システムは動きを補正するだけなので、別に無くてもいいんだよな。

「武技の習得に制限があるのは、主に体の負荷を考えてのこと。当然、俺が使えばそれだけで即死だけどな」

 体に無理のある動きを強要するうえ、再現に必要な精気力まで絞り出していた。
 お陰で威力が少し上がって、鷲にダメージが与えられていたんだけどな。

「『貧弱な武力』、『覇運勝負師』、『鳥種の天敵』、『必中』、『闘匠』に変更。ついでに【弓士】の(弓の心得)をセットだな」

 1の固定ダメージを確立し、クリティカルの発生率や防御無視を称号で行う。
 加えて弓の扱いに補正を掛ける職業スキルもセットして、さらに使いやすくする。

「あとは──『ヘビーウェポン』も」

 光の矢に重力を付与して、さらに矢を鷲に射っていく。
 何度も当てていくうちに、生命力が一定以下になって暴走モードに突入する。

 空からいろいろと仕掛けてきたウォーイーグルも、命懸けで突進してくるように。
 だが、『オートカウンター』が自動的に弓で攻撃してくれる。

 矢を射るとかそういう話ではなく、物理的に……弓で叩いているのだ。
 ダメージが1出れば、それがクリティカルとなってダメージを与えている。

 そうしてしばらく戦っている内に……俺は次のフィールドへの移動権を得た。


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