虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その14



 かつての仲間であるジンリは、俺の退路を断った。
 それは一種の覚悟であり……宣戦布告を意味する。

「おいおい、これはどういうつもりだ?」

『了承すれば出してやる。言っておくが、自死してもこの場に戻る。加えて言えば、そこでならば[ログアウト]も可能だ』

「……そこまでして、やる気か?」

『代表が居る、それだけで『渡り船』は最強へ至っていた。あの女の影響も絶大ではあるが、それ以前から代表は代表だった』

 何を言っているのかはさっぱりだが、まあかつてはルリと別のチームでオンゲーをやっていた時代もあった。

 そこでナンバーワンを決めるイベントが催され、そこで『渡り船』が優勝したのだ。
 たぶんジンリは、そのことを言っているのだろう……一度きりの真剣勝負だったしな。

「……お前がどう言おうと、やっぱり俺はやらないよ。お前の最強論は好きだ、インテリなのにそういうロマンに乗ってくれるのも、結構よかった。だが、それでも……俺って男は、いつだって自由だからな」

『相変わらず、わけの分からないことを言う奴だ。そのような男だからこそ、居心地の良さを奴らは求めている……こちらの意見は、お前を通さなければ聞かなかったな』

「……そんなことないだろ」

『いや、それが事実だ。支配者足り得ぬ、真の最強に届かない重要な点だ。ゆえに、お前が必要なのだ』

 ジンリの言葉が本気なのは、俺だって理解できるが……それでも、応えない。
 子供たちを理由にするだけではない、他にもちゃんとした理由がある。

「俺はさ、こっちの世界でいろんな奴らと出会った。まあどいつもこいつも一癖も二癖もある奴らで、バカやってるんだけどな」

『……これまでと変わらないな』

「ああそうさ、何一つ変わらない。だが、お前の提案に乗ったら変わるんだ。誰が言うでも思うでもなく、俺の考えが……」

 原地人──この世界の人々は、いろいろと面白い連中だ。
 俺も彼らを案外好きだし、もう一つの世界だと思っている。

 俺の活動は普段から、彼らと寄り添っていると思う。
 家族優先ではあるが、そうじゃないときは休人よりも彼らとつるんでいる。

「まあ、理屈じゃない。俺は俺で、やりたいようにやる。そのために、『渡り船』に所属はできない……ジンリ、これからはお前が新しい『渡り船』を率いればいい」

『そうはさせないと──』

「いや、するさ──『ゴーストボディ』」

『ッ!?』

 いろいろと対策はしていたようだが、さすがに『プログレス』すべての対応まではできていなかったようだな。

 物理透過の能力を起動すれば、あっさりと壁抜けが出来た。
 何らかの方法でこちらの行動を把握しているようだし、このままでいいと歩を進める。

 ──そして、回想前に戻るわけだ。


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