虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

目的探し その01



 アイプスル

「……さて、発送は完了したな」

 ルリの話を聞いて、とりあえずアイテムを転送しておいた。
 これで彼女の行いは、間違いなくその地の人々を救うことになるだろう。

「──まあ、というわけで『SEBAS』。俺は目的探しをしてみようと思う」

《なるほど、良い考えだと思います》

「……そう言ってくれるとは思ったがな。とりあえず、可能な限りアシストは無しでやってみよう。『生者』のコントロールと転移の座標、それ以外は俺が言ってからだ」

《畏まりました》

 やることを探す、まずはそれをゆっくりとやってみることにした。
 だが、『SEBAS』が居ては他力本願が過ぎる……子供たちに顔向けできないのだ。

 なので今回は、ある程度それを減らしてみることに。
 完全に、ではないのは本末転倒になってしまうから。

 常時『SEBAS』が結界の状態をコントロールすることで、俺は生きていられる。
 虚弱すぎる俺なので、それが無いと行動に支障が出るほど死にまくるからな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「とはいえ、最初はアイプスルで何か無いか探すところからだな。灯台下暗し、つまり自分の世界で何かすべきだったということもあるかもしれないからな……たぶん無いけど」

 俺と『SEBAS』で世界を巡り、地形情報は完全に把握している。
 時折必要に応じて開発を行い、よりよいモノにしているぐらいだ。

 開発と言っても、それは街や施設を建てているだけではない。
 自然を生み出し、生き物たちが過ごしやすい環境を提供するのも開発の一種だろう。

「ただ、それは全部『SEBAS』によって管理されているから、特に俺がやることって何一つないんだよな」

 他の世界ならまだしも、アイプスルは俺が主となっている星だ。
 すべてを支配しているので、それを生かしていろんなことをやっている。

 子供の児戯のように、あれこれやってみた結果……だいぶ上手くいった。
 それもこれも、すべて『SEBAS』が管理しているからだけど。

「……うん、やることなんて無いわな。完璧に近いからな、『SEBAS』の管理は」

 むしろ、手を加えることの方が問題になってしまうからな。
 とりあえず、星の管理そのもので俺ができることは案を出すことぐらい。

 だが新鮮なアイデアを得るためには、別の場所に行ってみることが手っ取り早く……結局、外に出るのが一番なんだよな。

「交流は普段からやっているし、それは目的というか習慣なだけだしな。うん、追加でやることが無い。やっぱり、外の世界で見つけないといけないみたいだ」

 ということで、次は別の世界へ移動して目的探しである。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品