虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ラグナロク後 その03



 ラグナロクではその成績に応じて、景品が用意されている。
 チーム順位、MVP、部門別などで評価された参加者たちが商品を受け取っていた。

「MVPの景品が酒なのは……そういうことなんだよな?」

「主神様しか受賞したことが無い部門ですので……貴方、いったい何をしたんですか?」

「まあ、いろいろだよ。あとで全員に配り歩いて、交流でも深めるか……そこで羨ましそうに見ている爺様は抜きにして」

「あ、貴方という人は……」

 遠くからこちらを観ていたオーディンは、発言を聞き目に見えるほど落ち込む。
 そして、それをからかう人族の青年の姿をした神であり巨人……彼が近づいてくる。

「いやー、楽しませてもらったよ」

「ロキ、様で合ってますか?」

「正解正解。気軽にロキって呼んでくれればいいから。あのクソ爺の無双なんて、御免だと思ってたらまさかの展開! いやー、いつも『超越者』は楽しませてくれるね!」

「あはは……どうも」

 予想通り、からかうと言ったらの存在だ。
 巨人でありながら、悪戯の神として主神のオーディンと義兄弟であるロキ。

 だが、仲がいいわけではないのは先ほどの呼び方で分かる。
 それでもからかうネタが無くて、きっともやもやしていたのかもな。

「何か上げることができたらよかったんだけど、そういう譲渡にも厳しいからね」

「いや、別に欲しかったわけじゃ──」

「だからそうだねぇ、手に入るかもしれない場所を提供しようと思う」

「……聞かせてもらえますか?」

 ニヤリと笑みを浮かべるのは、俺が話に乗ると理解していたからだろうか?
 ロキはその情報を伝え切ると、ニヤニヤと笑みを浮かべたままこの場を去っていった。

「……アインヒルド、どう思う」

「ロキ様はからかうことがお好きではありますが、嘘を吐くようなことはありません。ですので、先ほどの話は」

「となると、なんとかしないといけないわけだな。たしかに悪戯の神様だよ、ロキは」

 リスクはある。
 だが、自分自身で解決すれば、何かしらの成果を得ることができる話だった。

《すぐに情報収集を開始いたします》 

「ああ、大至急だな」

 さらに大変なのは、時間制限付きな点。
 今すぐというわけではないが、いずれは失われてしまうかもしれないというのが、ロキの狡猾さを表している。

 対策をしないまま突っ込んで行っても、何も成果を得られないかもしれない。
 時間と安全性、それらをどこまで両立させて挑むのかが大切なのだ。

「この世界に、まだ存在したのか……」

 というか、なぜ俺が欲しているのかを知っていたのだろうか。
 まあ、創作物を知っている身からすれば、ロキなら仕方ないかとも思うけどな。


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