虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
プログレス配布後篇 その11
それからスリャは、七属性すべてのエネルギーを試し撃ちした。
その都度俺に仕様を確かめ、そのうえで再度調整をしたりしている。
実際、一発目よりも二発目の方が精度が上がっているように思えた。
……まあ、どっちも基本ど真ん中だったので、あんまり変わりはないんだが。
「……恐ろしい銃だな、これは」
「いったい何がだ?」
「これだけの性能を有していながら、まだ完成品じゃないところがだ。まだ隠し玉があるに決まっている」
「ははっ、そこまで言ってくれるか……まあ実際、完成はしていないけどさ」
七大属性すべてを使えるようにしてはあるが、それは苦肉の策。
それらは相剋などの関係を保持しているので、すべてに効く万能属性などではない。
「どうせなら、どんな状況でも使える最強の属性にしたかったんだけどな……まだ未完成だし。スリャの使用データを基に、またどうにかできないかやってみるさ」
「俺は実験体か。だが、この狙撃銃の性能は計り知れないからな。たとえ誰であろうと、一度使ってしまえば従順な被検体になると保証してやる」
「……あんまり嬉しくないけどな」
デメリットなどはいっさい存在しないぞ。
俺も『SEBAS』も、基本誰かが使う物にそういうクレームの入りそうなヤツは使わないことにしているからな。
「そういえば、お前の『プログレス』はどういう能力だったんだ?」
「ああ──『バードライダー』だ。フリュとの関係が理由なんじゃないか?」
「たぶんそれで合っていると思うぞ……えっとたしか、成長させれば人馬一体ならぬ人鳥一体ができるらしいぞ。その域まで、成長させてみてくれ」
「言われるまでもない。俺とフリュの愛称なら、里長たちも超えて見せる」
フリュとは鳥型の魔物なのだが、スリャの相棒のような存在だ。
隠れ里に住まう森人族たちは、彼らと共に生きている。
彼らは森人族に従属している存在なので、現状『プログレス』は使用できない。
それでも【魔王】との研究が済めば……使えるようになるかもな。
「そうだな、それは頑張ってくれ。俺にはどうしようもない話だからな」
「お前ならすぐにでも解決できそうだがな。しかし、これはたしかに俺とフリュの問題だからな。里長たちを超えるためにやることは全部、俺とフリュだけでやるべきことだ」
「ふーん、まあ即席のレベリングをやるよりはそっちの方がいいと思うぞ。……さて、そろそろ戻ろうか」
「ああ」
俺とスリャは鍛冶場に戻る……さて、里長と話し合いができればいいけど。
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