虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

支配者会談 その09



「──“武魔一体”、“闘合魔功”、“常在戦場”、“未開探拓”」

「そんなにたくさん職業に就いてんのか? けど、俺の【闘神】の方が強い!」

「分かってますよ。それでも、これが私にできる最大限の強化ですから」

 理論上、無限に強くなれる【闘神】の職業スキル“我闘無敗”。
 すでに“精辰星意”を施しているが、強化量がデカすぎて全然効いていない。

 なので新たに職業スキルを加え、早々の決着を望むことに。
 ……ゆっくりやっていると、【暗殺王】に抑えさせている【情報王】が動き出す。

 俺は闘士系の職業スキルを二つ、【戦者】という複合職のスキルに、【探索者】の職業スキルを起動させた。

 前二つは魔力を交えた戦闘に補正を与え、【戦者】は戦闘可能な場所に居るだけで能力値へ補正がはいる。

 そして、【探索者】。
 これは迷宮でのみ発動可能なスキルで、就職者の迷宮踏破度に準じた能力値の強化を可能とする──ぶっ壊れスキル。

「知っていますか? 最後の“未開探拓”は迷宮が深ければ深いほど、難易度が高ければ高いほど性能が強化されます。そして、ここはどこでしょうか?」

「……超簡単な『修練の間』だろう?」

「半分正解です。ここにありますは二つの迷宮──ご存じ『修練の間』ともう一つ、たった一人のために生みだされた裏迷宮が存在します。その難易度は……その者にしか攻略できないレベル、でしょうか?」

「ッ……!?」

 少しずつ高まっていく能力値……の方はあまりだが、魔力は膨れ上がっていた。
 階層は少ないものの、『生者』専用ともいうべき神練の迷宮がここには存在する。

 そして俺は、この迷宮を会談が始まる前に完全踏破しておいた。
 隅から隅まで、余すことなくマッピングを済ませた結果、強化度合いが凄いことに。

「さぁ、続きを始めましょう。そして、すぐに決着をつけましょう」

「……面白ぇ。なら、全力で行くぜ!」

 俺は膨れ上がった魔力で身体強化を行い、対する『拳王』は“我闘無敗”による強化。
 向こうにはデメリットが無いように思えるが、実はとんでもないものが存在する。

 負けたら一定確率で剥奪されるのだ──職業そのものが、だ。
 闘う神が負けることなど許されない……そういうことなのだろう。

 まあ、レベルだけは異様なのが俺なので、その剥奪率はだいぶ低いんだけど。
 使ったらそのリスクがあるにも拘らず、使用してくれたことに感謝するべきだ。

「──『撲殺の拳帯』」

「──“覇砕拳デストロイナックル”」

 互いに決め技を使い、相手に打ち込む。
 そして、それは互いの顔面に命中し──


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