虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

支配者会談 その03



「わざわざこの場所に集まったのです。これから先、この街をどうしていきたいのかご意見のある方はどうぞ。それを他の皆さんがどう思うのか、それはともかく……嘘偽りのない、真実のみを述べてくださいね」

 最後の一文は、ある意味脅しだ。
 事前にそう言っていたからこそ、これまでも隠すことのない本音での語り合いが行われていた。

 また、真実と事実は違う。
 それでも俺は真実を告げろと言う……ここの人たちはだいたい頭がいいし、分かってくれるので助かる。

 ここからは一人ずつ意見を主張し、それに問いが入る方式でやっていく。
 プレゼン……とはちょっと違うけど、もう少しだけ口でやるつもりだ。

「まずは私が。私はこの中で、唯一の休人ですので。正直に言えば、大きく干渉をしたくはありません。上からな発言と思われるかもしれませんが、その地での揉め事はその地の人々が解決することですので」

「ん? なら、なんで出てきたんだ?」

「【情報王】さんが、休人たちを用いたからですよ。実際、休人の中でも十指に入る実力の持ち主も混ざっておりました。さすがに、こちらの人々だけに任せるというのも酷な話ですので」

 俺が[ログアウト]しているとき、他所へ出向いているときも世界は進んでいる。
 オフゲーのRPGならまだしも、ここは真の意味でマッシブリーマルチプレイなのだ。

 だが、休人が介入してくるのであれば、全力でその排除に徹する。
 彼らは不死であり、ごく一部の者はゲームとして容赦なくこの世界の人々を殺す。

 互いに何らかの取り決めがあった上での行いならばともかく、意味の無い遊びとして彼らの命を奪うと言った行為なのであれば……浮かばれないだろう。

「私に案厄街を、この街すべてをどうこうしたいという欲はございません。一つの場所に留まるよりも、さまざまな場所を巡ることを好んでいますので。ただ、一つ口をはさむのであれば、誰でも楽しめるように、ですね」

「楽しめるように、ですか。ツクル殿は、不老不死を皆で共有したいということで?」

「ははは、まさか。今と昔では、この街に求められるモノが違います。行うのであれば、もっと頭を空っぽにするようなことですよ」

「不老不死を要らないと申すか……じゃが、たしかに一理あるのぅ。限りある命ゆえ、萌えるものもあるからな」

 なんだか意味の違う納得をしている者もいたようだが、だいたいの者は頷いている。
 しかし当然というか……そこに異議を唱えるのもまた会談だろう。

「それはお前が、こちら側の世界ではすでに不老不死だからではないか?」

「……と、言われますと?」

「何を今さら。得ている物に執着などする必要がないだろう。所詮は対岸の火事、死んでも損などないお前たちだからこそ、そのようなことが言えるのだ」

 ずいぶんとまあ、ごもっともなことを。
 それでも俺は不老不死なんて要らない……少なくともルリは、そう言うだろうからな。


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