虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

霊子変換室 その03



「……一人、か?」

「ええ、一人です。ですが、誰もこの先には通さないと思ってください」

 現れた休人は全部で九人。
 ……この部屋って人数制限があるので、そう一気に人は入って来れない。

 とはいえ、それはつまり何度も戦う必要があるということ。
 外部の状況は『SEBAS』がドローンで撮影しており、終わりかどうかは分かる。

「邪魔だ──“風刃エアカッター”!」

「──『天閃腕』」

 痺れを切らした休人が斬撃を飛ばしてくるが、俺も真空刃を飛ばして対抗。
 威力もそれなりなのだが……相手は優秀な冒険者のようで、相殺された。

「相殺だと……なかなかやるじゃねぇか」

「お気に召したようで何よりです。では、次も満足してくださいね──『白雷』」

「チッ、魔法かよ……誰か、壁くれよ!」

「了解──“土壁ソイルウォール”!」

 仙術を魔法と勘違いしているようだが、それでも防御には成功される。
 大地に電流が呑み込まれて、俺の攻撃は届かない……が、目隠しができた。

「──【刀王】、『神域抜刀』」

『!』

 読み込んだ情報を基に、俺の体は強制的に動かされる。
 腰に刀が自動的にセットされ、それを物凄い勢いで引き抜くだけ。

 ただそれだけを極めた斬撃は、神速と呼ばれる勢いで斬撃を飛ばす。
 優秀な休人たちではあるが、刀を使う職業でも最上位に存在する【刀王】の斬撃。

 その補正を受けず、本人の技量のみで放たれた居合切りは彼らを一刀両断に伏す。

「……では、お伝えください。誰であろうとこの先には、決して通さないと。強引に通るのであれば……実力行使となります」

 一部の者たちは、土下座してでも交渉に持ち込むけどな。
 彼らが来ることは無い……このまま、防衛し続けるだけだ。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「ふぅ……弱体化させといてよかった」

《“精辰星意”を発動させない場合、一部の者が耐え切りましたね。アレには生命力がギリギリで残る能力を、無効化するという効果もございますので》

「そっちは厄介だなぁ……ちょうど死亡後は動けないようになっているのに、生きられるとまだ残っていたのか」

 霊子変換室で死んでしまうと、死亡後に動けるといった能力が使えない。
 霊子……つまり死亡後の体が発するエネルギーを、この部屋では感知するからだ。

「霊子変換室へのハッキングはどうだ?」

《現在は旦那様の指定した、選出者の調整のみに専念しておりますので……進行度は5%といったところでしょう》

「休人が来ている間は、【情報王】も本格的には動けないだろう。早い内に、終わらせないとな」

 同時に、さまざまなことを考えなければ対処しなければならない。
 ……面倒ではあるが、この先には行ってもらいたくないからな。


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