虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布中篇 その17



「……早いですね」

「これが……私の力、なのか」

「先に『プログレス』に関する情報を調べましょう。今から言うとおりに操作し、詳細を調べましょう」

 英雄様が『プログレス』を装備した瞬間、即座に発現するという事態が起こった。
 宝石型のアイテムは姿を変え、今は巨大な旗の形を取っている。

 とりあえず自分で調べてもらうことで、ついでに『プログレス』の利便性も体験してもらうことにした。

「──『フラッグフラグ』。これが能力の名だそうだ」

「それはたしか……はい、運命操作が行える希少な能力ですね。自分や自分の組織する集団に加入している者に、運命の加護や行動補正が入ります」

「それ自体は私の職業である【革命英雄】と似ているのだが……どういうことだ?」

「『プログレス』は職業などではなく、本人の在り方を具現化します。それはつまり、英雄様がその力を求めているということです。それこそ──今すぐ発現するほどに、強く」

 少し前に【刀王】がやってみせたように、受け取ったその日に発現することがある。
 それは本人がその発現を強く望み、それに『プログレス』が応えたとき。

「間もなく【情報王】さんによる、第三の街への侵攻が始まる。もしや、それと何か関係があるのでは?」

「……隠しきれないか。どうやら奴はその場所を目指すために、闇厄街を破壊することも是としているそうだ。民たちの居るここを守るためには、力が必要だ──『生者』、君の力を貸してほしい!」

「残念ながら……それは、難しいですね」

「なぜだ!?」

 前回協力していたので、今回も……ということだろうか。
 しかしながら、まだ説明していないアレがあるので仕方ないのだ。

「『プライベートアイ』。【情報王】さんの警戒網が、私にも向けられています」

「! ……動けない、ということか」

「ええ。今の私の立場は中立、あまり英雄様に加担した場合は……他の支配者たちも、何らかの動きを見せるかもしれません」

「……【情報王】だけならばまだしも、他の相手もとなると難しいか」

 少し前に【暗殺王】の領域を攻め、食料を得る術を手に入れた英雄様御一行だが……本気の【暗殺王】とは戦っておらず、俺も交えた無血革命だった。

 しかし、今回は間違いなく戦闘が生じることになる。
 容赦ない【情報王】だし、住処を奪われるとなれば人々も抗うだろうし。

 そこに俺が参加しているとなれば、パワーバランスが崩れてしまう。
 介入してくる奴らが何人なのかは分からないが……多大な被害が、この街で生まれる。

 ──それを防ぐためにも、俺は参加しない方がいいのだ。


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