虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

プログレス配布中篇 その04



「ああ、二人とも使えるようになったか」

「じゃが、これは……」

「ちょっと待ってくれ。たぶん、千苦の方が先に説明できると思うから。コミのは……初めてのケースだ。少し調べて、ちゃんとした情報を伝える」

「う、うむ、よろしく頼むのじゃ」

 ログインした俺を迎え入れたのは、外で新たな力を振るう千苦。
 これは想定していたことなので、別にいいのだが……問題はコミにあった。

 本来はケモミミ鬼っ娘という属性盛りな少女なのだが、それが強化されていたのだ。
 具体的に言うと──狐の尻尾が三本、鬼の角が少々長さを増していた。

 間違いなく原因は『プログレス』にある。
 しかし、そんなケースはまだ無かったと記憶しているので、『SEBAS』に解析してもらっている間は待ってもらうことに。

 代わりに千苦の下へ向かい、彼が起動させた『プログレス』の能力説明を行う。

「というか、てっきり心配だからって傍にいるものかと思ったんだが……どうしてここで試しているんだ?」

「……本来ならばそうしたかったのだが、他でもない狐魅童子様直々に、その力を試してほしいと言われてしまったのだ」

「なら仕方ないか。まあ、ちゃっちゃと説明するから。そうしたら、二人でコミの下に戻ろうか」

「ああ、そうしよう」

 能力の使い勝手、本人の感想などをいちおう聞いておく。
 能力そのものはすでに、『SEBAS』が情報を送ってくれてあるので知っているが。

「──『カースドアーマー』、それが千苦の『プログレス』の能力だ。自分でやっていたように、生成された籠手に呪いや状態異常を乗せて攻撃すれば、一定確率で相手に感染させることができる」

「これはよくある能力なのか?」

「まあ、状態異常をよく使う種族とかにはよく見られる能力だな。千苦のヤツは、中でも呪い系に特化しているぞ」

 ちなみに、休人の中にもそういう能力を発現させた奴がいるのだが……あまりよろしくない思想の持ち主が、該当していたな。

「千苦の場合はそうだな……今は一種類ずつだが、複数を掛け合わせることができるかもしれないな。もしくは、『プログレス』内でその症状を濃縮して悪化させるとか。その進化の先は、持ち主が決めることだ」

「…………狐魅童子様の役に立つものを」

「まあ、そこら辺は自由だ。自分の持つ状態異常、その抗体……それを治すことができる能力なんかが発現するかもな。感染を転移にして、コミに呪いが掛けられても治せるとかそういう感じで」

「! 素晴らしい、ぜひともそういった力に目覚めてみせよう!」

 そうして千苦は、『プログレス』の進化の方向性を定めた。
 お次は、まだ自身の能力がどんなものなのかも分かっていないコミの番だな。


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