虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陰陽師問題 その17
「──はい、お二人ともお疲れさまでした。『辻斬』さんも、復讐の達成おめでとうございます」
「ああ……ようやく、終えたのだな」
「ええ、確実に終わりました。これで少し、『陰陽師』さんも懲りることでしょう」
「──ほんに、恐ろしい人たちやなぁ」
心臓を刺し貫かれた『陰陽師』だが、今もピンピンとしている。
その理由はシンプルに、妖刀での攻撃が致命傷にはならなかったからだ。
「某の妖刀[童哭]は、人を殺めることなどありえぬ。某にとっての復讐とは、死を以って償わせるものではないのだからな」
「……体が重いんやけど?」
「当時の某にとって、初めての妖刀は命の次に大切な物だった。ゆえに、お主からは命以外のナニカを頂くことで復讐とした」
「──今回の場合、どうやらレベルドレインが発動したようですね。恒常的なモノですので、しばらくはレベリングに専念することをオススメしますよ」
解析を『SEBAS』がした限り、ランダムでそういった現象が起きるそうだ。
レベルドレイン以外にも、一定時間の行動制限や能力値の固定とかもあるらしい。
ただ、今回レベルドレインが発動することは確定していた。
なぜなら、『陰陽師』は絶対にレベルドレインされる……そんな効果があったそうだ。
本来はごくまれにしか起きない、使えても抵抗されたり全然吸えないレベルドレイン。
それを確定で、そして一定以上行えるのだから、対象が絞られていても単純に凄い。
「完全な対『陰陽師』さんなわけです。何か悪行をしでかした場合、『辻斬』さんが誰かに依頼されて、レベルを奪っていく……なんてことになるかもしれません」
「……『辻斬』はん、そんなことせぇへんよなぁ?」
「……さて、どうだろうか」
「いけずや──女の子同士やない!」
……さて、今まで復讐にはまったく関係なということもあり説明していなかったが、実は『辻斬』は女の子だ。
まあ、袴を着たポニーテール系黒髪女子をイメージしてくれ。
「性別など関係ない。某は鍛冶師を目指した時点で、女などとうに捨てた身。もし、再びお主によって某の心の平穏が揺るいだ時は、私怨であろうと……再び斬る」
「──そうはさせんのじゃ。今回は事情をすべて『生者』から聞いたゆえ、あえて主に反省を促したが……私怨であれば、妾たちが立ちはだかろう」
「……一火、それに三稀、四瑠、八倶」
まあ、なんとも感動的な光景か。
しかし、次の一言で台無しになった。
「あんさんら、口に食べかすが残っとるよ」
『…………』
「ほんに、あんさんらは……しばらくの間、おやつは抜きやね」
『…………っ!?』
まるで世界が終わった、そんな表情を浮かべる式神少女たち。
……うん、後でこっそりとお菓子を渡してあげよう。
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