虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

陰陽師問題 その09



 あれから、『辻斬』は手数の多さでどうにか俺を倒そうとする。
 大量の妖刀をこれでもかと使い、何度も何度も俺の首を刎ねた。

 それが通用するのは一度目のみ、二度目以降は異なる妖刀で無ければ通用しない。
 学習能力の権化たる[最敵]に、同じ手は通用しない……凄いな。

 そんな[最敵]を使っているのだが、解析した『辻斬』の動きをトレースして使える。
 しかしそれでは、『辻斬』自身の技量を上げることしかできない。

 なので『SEBAS』が用意したデータを基に、新たな動きを行っていた。
 具体的には先ほどのように【刀王】、そして『騎士王』のデータなどを混ぜている。

 他にも式神という妖術関係ということで、前にデータ採取を協力してもらった、物ノ怪たちの攻撃パターンも組み込んでおいた。

「妖術──『血鬼鎖監』」

「くっ……[乱魔]!」

「魔力妨害ですか。妖術相手には、あまり良い選択とは言えませんよ」

「──“散魔”!」

 妖術を飛ばした俺に、魔力を乱すという妖刀を用いた『辻斬』。
 何をするのかと思えば、乱した魔力を操り強引に壁として防御に用いた。

 血のように真っ赤な鎖は壁に当たり、そのまま消失する。
 俺の妖術は擬似的なものなので、初期状態だとそこまで性能は高くないのだ。

「一気に行きますよ──『煉獄炎』、『凍獄氷』、『噴獄嵐』、『呑獄地』、『鬼土』」

「地面が……! ならば、[飛天魔]!」

「嵐を選びましたか……『剣矢』」

 取り出した弓に矢ではなく剣を番え、上空へ逃げた『辻斬』を射る。
 だが、それはフェイク……先ほど最後に発動した『鬼土』はまだ効果を発揮していた。

 効果はシンプルに土の操作、しかしそれは『呑獄地』で行われている。
 ならば何をしたか……今なお、地面は蠢き上を目指していた。

「その剣は光りますよ」

「眩ッ……足が!」

「『鬼土』ですよ。そのまま、地面に帰ってきてください──『血鬼乱武』!」

「うがっ!」

 命を代償にブーストを掛けて、地面と繋げた『辻斬』を引っ張りそのまま叩きつける。
 まあ、ほぼ0な俺の攻撃力(筋力)だし、実際は結界を利用してやっているだけだが。

「──とまあ、このように。『陰陽師』さんの式神たちは、多岐に渡る戦術を用いて対応してきます。私の持ちうる限り力でサポートいたしますので、ぜひとも頑張りましょう」

「……なぜ、『生者』殿はここまでしてくれるのだ?」

「そうですね、なんとなく……ですね。本当にこれと言った理由はございませんが、同じ生産職として、術士に勝てるという自信が欲しいのかもしれません」

「そうか。ならば、もっと精進せねばなるまいな──続けよう、『生者』殿!」

 まあ、そんなこんなで特訓は続く。
 そして数時間後……俺はこの場を去り、再び『陰陽師』の下を訪れるのだった。


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