虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
陰陽師問題 その07
戦闘を始める前に、ちょっとした準備時間が貰えた。
まだ会ったばかりだし、『辻斬』にもその時間が必要だったので。
《『辻斬』の職業は【妖刀鍛冶師】、旦那様も就職可能な職業でございます》
「解析も終わったか……妖刀を使うってのは分かっていたが、まさか鍛冶職だったとは」
生産職は基本的に、戦闘に必要な攻撃力や速度などに関する補正は入らない。
ただし、【鍛冶師】系統の職業であれば、筋力という形で攻撃力に補正が入る。
そして何より、生産職すべてに該当する能力に“私権試用”というものが存在した。
自分の作り上げたアイテムに限り、使用さえできればある程度使いこなせるのだ。
本来は担い手、つまり適性者のみが振るうことができる武器なども存在する。
しかし職人たちは、『試し』という形で能力の使用が許される……死ぬ場合もあるが。
そして、『辻斬』はその試しの域を超えて妖刀を育てようとしている者だ。
使用制限が解除された妖刀を振るい、腰に提げている他の妖刀をも同時に使う。
「つまり今は、『生者』を殺せる妖刀を選んでいるし、それをすることで育てられる妖刀のチョイスをしているわけか」
《……いかがなされますか?》
「自分だって、これまで数々のトラブルグッズを作ってきたんだ。仕方ない、たまには試す側じゃなくて試される側になろう」
妖刀というジャンル縛りをしているわけではないため、俺の方がネタアイテムは多い。
いやまあ勝負をしているわけではないし、相手側にそもそもそんな意識が無いけど。
◆ □ ◆ □ ◆
「いざ、尋常に勝負!」
「……【刀王】」
刀使いの相手をするならば、もっとも適切な相手がいいはずだ。
そういうわけで、動きと権能を再現することで擬似的に【刀王】と同等の力を振るう。
「むっ、『生者』殿……その動き、そしてその刀は!」
「動きは【刀王】さんのもの。そして、刀は私の打ち上げたもの──導刀[最敵]です」
「なんと、『生者』殿も鍛冶師であったか。しかも……同志なのか!」
「いえ、そういうわけでは……私のは、単なる趣味ですよ。申し訳ありませんが、あなたのような情熱があるわけではありません」
誤解されそうなので、先に言っておく。
刀をぶつければすぐに分かるだろうが、事前報告は大切だ……雑魚が振るえるほど、俺が打ち上げた[最敵]は甘くはない。
「この刀は、相対した者に試練を課します。敵を知り、己を知れば百戦殆からず。という言葉に従い、行いましょう。『陰陽師』さんの首元へ、刃を届ける修業を」
「!」
うん、どうやらこの方向で合っているな。
……解析にも時間が掛かるし、しばしお付き合いください。
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