虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

マラソンイベント その15



「うわぁ、今回はこっちも対策済みか……頼むぞ、メカドラ」

『ギャオォ!』

 異様な脚力や空を『走る』スキルが存在するからか、今回は上にも仕掛けがあった。
 空中機雷や魔物、異常な重力や射出される武器など……さまざまである。

 避けられるものは自動走行システムが回避し、そうでないものはメカドラこと[龍星]の銃モードで対処していく。

 魔石を弾丸にしている時間も惜しみたくなるほど、大量の仕掛けの数々。
 仕方なく自動装填用のオプションを取り付け、散在するように魔石を食い潰していく。

「もったいないなぁ……メカドラ、次に進化するときは効率を上げておいてくれ。威力は魔石依存にでもすれば、補えるからな」

『ギャァア!』

 もともと『プログレス』とは、成長する機械をコンセプトに作られた。
 その原型とも呼べるメカドラは、リソースさえあれば望む形に成長することができる。

 ただ、多様な成長をさせると一つひとつの性能が落ちる……何かを代償として失わせた方が、より性能を上げられた。

「ただ、派手にやり過ぎるのもな……目を付けられているみたいだし、事故を装いながらやるのも大変だ」

 メカドラの性能をフルスペックで発揮すれば、一気に殲滅もできるだろう。
 しかし、地上から向けられた感知の波動が俺にそれをさせない……死んじゃうし。

 速度は下げていないので、地上を走るランナーたちの感知領域から離れている。
 だが、結局それならそれで、より強い者たちが後方に居る俺の存在に気づくわけだ。

 空を移動しているうえ、その速度が光に匹敵するのでトップに追いつけている。
 だが、非戦闘職とはいえ、彼らも自衛をするためかそれなりに強い。

 敏捷値は俺の何千、何万倍もあるだろう。
 スキルも無数に所持しており、俺を追い越すだけの実力がある。

「“フルドライブ”で飛ばしていても、持たないものは持たないからな……そもそも、参加することを想定していなかったからな。これぐらい、覚悟はしておくべきだったか」

 速度を上げるだけでは、ダメだ。
 キースのように空間を越えて移動する者がいるうえ、感知能力や攻撃射程が優れている者などもいるだろう。

「『プログレス』で強化されて、強くなった奴もいるだろうし……墓穴とか自業自得ってこういう使い方なんだな。まあいいや、とりあえず──魔術“千変宝珠・隠密/防御”」

 だいぶ魔改造が進んでいる『騎士王』お手製の魔術を起動。
 宙に浮かんだ宝珠たちは、俺の周りを飛び続ける。

 高度な隠蔽機能を組み込み、堅固な結界を纏う宝珠たちがボディーガードを行う。
 俺自身の存在も隠してくれるし、有象無象の攻撃も跳ね除ける。

 これならば、安心して進むことが可能だ。
 ……改めて、最前線へ向かおう。


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