虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

神様談(18)



 ■■■──創造神は思う。
 自分が選んだ男は、なんだかとんでもない方向へ進んでいるのでは、と。

 それ自体は、今までも何も変わらない。
 何度も自分たちの想像を覆し、ありえないと考えていた既存の概念を打ち砕いていく。

 しかし、今回もまた彼──ツクルはやらかしていた。
 既知を未知とする、それを娯楽とする神族なので、創造神はそこに興味を持つ。

 そんな■■■に視線を向けるのは、配下である◆◆◆◆。

「また何か、考えておられるのですか?」

「考えてみてよ、◆◆◆◆。10000ものレベルを上げるために、人族が本来どれだけの長い年月を費やすのか。そもそも、あの能力を引き出した者がどれだけいたのかを」

「……それは」

「ああ、ごめん。まだ、君にはその資格が与えられていないんだっけ? ネタバレをすると、いちおういるんだよ」

 星より世界を任される【救星者】。
 その身は生命体でありながら、外付けの枠により一段階高次元の存在へと昇華される。

 その副次結果として、彼らは膨大な寿命ととある権限を持つ者と化す。
 時間を費やし“職業系統樹”に経験値を注ぐことで、彼らは力を高めていく。

「けど、ツクル君とは関係ない話だよ。今はまだ……ね。問題は、その速度だよ。これまでも【救星者】の中には、星の力をリソースにして経験値を蓄えていた人はいる。けど、その半分くらいは失敗して死んでいる」

「なぜですか? たしか、【救星者】は守護する星のリソースであれば、問題なく受け付けられるはずでは……」

「外身はね。いきなり強くなって、耐えられると思う? 能力値的にも、精神的にも」

「! ……そういうことですか」

 経験値を得ればレベルアップし、能力値が向上することで強くなる。
 システムに則った正当な強化法、行うことこそが望まれているとも言えよう。

「ツクル君の世界で例えるなら、トラクターにレースカーのエンジンを積むぐらいの違和感が出るんだよ。というか、ほぼ間違いなく壊れる……ツクル君が異常なだけで、急激に成長させれば当然なんだけどね」

「最下級の職業が主とはいえ、10000ものレベルを上げる。それが条件となる能力、そこにどれだけの価値があるのでしょう」

「それこそ、命も懸けなきゃいけないほど危険なね。枷を外し、職業というシステムに干渉し得る能力。星という存在に与えられた権限を部分的に譲渡されたことで成し得る、相応の対価が必要な力さ」

「それほどのものですか……」

 神族は職業やスキルを持たない存在。
 ゆえに、その意味を真に理解することはできない。

 信じられるのは上司の言のみ。
 だが、普段はアレでもこういうときは頼りになるお方だと感じている。

「ツクルさん……」

「……ねぇ、ちょっと。今、アレとか思ってなかった?」

「…………」

「無視!? いや、もっとちゃんと聞いてよね!」

 ◆◆◆◆は今日もまた、とある世界に向けて祈りを捧げるのだった。


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