虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

星霊獣 後篇



「ふむふむ、イピリアが先だったか。まあたしかに、創造と改造だと終わる時間も違うのは当然だよな。風兎もそう思うだろう?」

『……ふんっ!』

「あー、まあいろいろあったんだ。イピリアの方は、その体に違和感とかはあるか?」

『いや、特には。むしろ……体から力が溢れ出るような感覚があるな』

 世界樹は巨大な実を落とし、そこからイピリアが現れた。
 その際、風兎と揉めたため……やや拗ねてしまっている。

 そんな事情を知らないイピリアは、首を傾げながらも俺の問いに答えた。
 俺の死亡レーダーが、鳴らす警鐘の速さとけたたましさを上げているから分かるけど。

 星霊獣となったイピリアに、見た目的な変化はない。
 だが内包するエネルギー量がこれまで以上で、何より特殊なものとなっていた。

 世界樹の内部にある微精霊は、基本的にまだ無属性だが属性付きの個体も少数居る。
 それらも取り込んだ結果、全属性を操ることができるようになったのだ。

 無属性の精霊たちも、純粋なエネルギーとしてイピリアに還元されたはず。
 星霊とは、それに加えて星の力まで供給されるから強いとのことだ。

「今、お前の体を二つの力が巡っている。一つは精霊の力、もう一つは星の力。星霊獣の優れているところは、精霊の力と星の力を、その姿の性質と共に使えるところだ。まあ、まだ制御に手間取るだろうけど」

『……どうやらそのようだな』

「それもすぐに使えるようになるだろう。ただ、そのまま使おうとすると制御できないからな──破壊のために使うわけじゃないんだからな?」

『! そうだ……しかし、どうすれば』

 星の力を使えば、創造も破壊も思いのままになること間違いなし。
 だがどちらが簡単かと聞かれれば、制御を必要としない破壊と答える。

 何かを慈しみ、育むためには力の使い方を学ばなければならない。
 そしてそれをもっとも早く学ぶ方法は──知っている奴から習うことだ。

「そこで、風兎の出番だ。先生が星から力を引き出す方法を知っているから、それをどう生かせばいいか教わってくれ」

『……私とて、約束は守る。何よりコイツは生きとし生ける者のため、その力を使おうとしているからな。どこかの毒を撒いた大バカ者とは! その点が違うからな』

『…………』

「あー、昔はいろいろとやったらしいって聞いただろう? だから……その、な?」

 邪精霊獣として瘴気を振り撒いていた過去が、どうやら突き刺さったらしい。
 これからは、それを拭い去れるような経験と巡り合えるような生き方をしてもらう。

 ──期待しているぞ風兎、あとのことは任せたからな!


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