虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

万戯華境 その08



「うーん、なかなかに大変だ」

「なんでなんで、なんでなのスカイ!?」
「なんでなんで、なんでなのレープ!?」

「「なんで死なないの、あなたは!?」」

「私の子供たちへの愛が、貴女がたの姉妹を思う愛にまさった……ただそれだけですよ」

 死んでも死なない、それこそが『生者』の権能……というわけではない。
 死んで即座に蘇える、そのタスクをエンドレスで実行するだけのこと。

 シンプルな権能だ。
 休人の機能と結びつくことで、本来蘇生という膨大なリソースが必要な事象を格安で可能としていた。

 もちろん、蘇生代わりの死に戻りも通常なら経験値やデバフなどのデメリットがあるのだが……虚弱すぎる俺の場合、弱すぎてそれが徴収されていないからやり放題だ。

「本当に貴女がたの愛が、私の家族を想う愛に敵わない……ただそれだけですよ」

「むー、そんなことないよね、スカイ?」
「むー、そんなことないよ、レープ」

「「絶対に負けるはずがないんだから!」」

「……ならば、勝ってください。敗北者であるお二方には、そのまま喧嘩を中断してもらいたいですね」

 その返答は──怒り。
 自身の想いを、そして姉妹の想いを否定されたことは、彼女たちにとって本気を出すべきものなのだろう。

 大量の魔法、魔力弾が俺に向けられる。
 これまではそれぞれ別に放たれていたが、今回のそれは連携の取れた攻撃だった。

「よい連携です。やはり、やればできるではありませんか……」

《権能の解析が完了しました》

「……ちょうど頃合いですね。そろそろ、私も本気を出しましょうか」

「ッ……!? スカイ!」
「ッ……!? レープ!」

 これまでは時間を稼いでいた。
 しかし、『SEBAS』による権能の解析さえ終わってしまえば……わざわざ時間を稼いで、権能を使わせる必要が無くなる。

 使うのは再び、『死天』のアイテム。
 その効果を少々劣化させ、非殺傷レベルまで抑え込んだアイテムを振るう。

 それによって、放たれる氷の矢。
 空間の歪みから射出することで、なんとなく魔法みたいに振る舞えているな。

「『凍死の寒矢』、触れたモノすべてを凍らせる一撃をどうぞ」

「──“身命祈願サクリファイスウィッシュ”!」
「──『空気壁』!」

 射出した氷の矢で牽制するが、双子はそれぞれ異なる方法で攻撃を無効化する。

 レープは命を使い、願いを叶える魔法で。
 スカイは権能を使い、変質させた空気で。

 ちなみにこれ、休人が使う場合は強制的に初期地点へ送還され、即座に膨大なデスペナルティを課せられるそうだ。

 これは俺も同じらしいので、今のところ使わせてもらう気はない……権能は複製できたので、やらないわけではないだろうけど。

「なかなかやりますね……ですが、これならばどうでしょう──『覇獸』、『侵略者』」

 ある意味、俺は双子のいるこの場所へ潜り込んだ侵略者だ。
 実に皮肉が効いている……ならば、思う存分使うとしよう。


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