虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

捜索開始



「期日などは設定していないが、できるだけ早く見つけてもらいたい」

「具体的な場所は分からずとも、だいたいどの大陸とかそういう情報はないのか?」

「それすらも不明だ。分かっているのは、この世界であればどこにでも出現する可能性があるという一点のみ」

 衛星ドローンが宇宙にあるので、大陸すべてを地図として記載はしてある。
 だが、行ったことがない場所が多く、俺としても見知らぬ地には行きたくない。

 そうなると、狙うのはこの大陸に現れたときだけだ。
 監視システムを一度洗い直して、それらしい現象を捜索して──

「……いや、だいぶ面倒臭いな。移動速度とか、そういうものは分かるか?」

「奴ら次第だ。高速で移動することもあり、時には牛歩が如き速度になる。内部の変化が外部にも及んでいるのだろう」

「速度で特定するって作戦も無理か……人海戦術で当たるしかないのかもな」

「その辺りは『生者』に委ねよう。そうだ、このような形にすればよいのだな?」

 何を言っているのかと思えば、ピコンとなかなか鳴らない通知音がクエストの始まりを告げてくる──

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クエスト:『騎士王の依頼:千変万化』

説明:双子の『超越者』が諍いをしている
『生者』にはそれを何らかの理由で鎮静し、問題の解決に勤しんでもらいたい

[※なお、この依頼は強制受注されます]
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 ……やっぱり強制になっていた。
 さっきまでの問答はなんだったのかと問いたくなるが、どうせはぐらかされるだろうし大人しく受け入れる。

「少しはやる気が出たのではないか?」

「いやいや、根本的な解決がまったくされていないのにそうはならない」

「そういうものだろうか。【円卓騎士】たちであれば、内心で喜んでいるのだが」

「仕える主からの言葉だからな。俺は違うんだよ、もう行くからな」

 そう言って、『騎士王』と別れてアイプスルへ移動する。
 一人で考えるなら、転移するなら、見つけだすならそれがベストだからだ。

 探し方を工夫しなければなるまい。
 相手は全能にして万能たる『騎士王』すらも、片手間ついでにでは処理することのできない厄介な相手だ。

 少なくとも、純粋な力比べでは勝利できないだろう。
 それだって、まずはかくれんぼの勝負に勝たなければやることができないし。

「『SEBAS』、衛星ドローンを使って証言通りに何か環境に大幅な変化が起きている場所を見つけてくれ。『千変』と『万化』、二人じゃなくとも情報として使える」

《畏まりました》

「しかしまあ、ランダムでエンカウントする特殊な力な存在……伝説のホ°ケモンか? いずれにせよ、あれだってちゃんとあるもんな──見つけだすための道具が」

 よし──捜索用の魔道具、その開発に入るとしよう!


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