虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

家族冒険 その20



 俺たちの初めての冒険、その最後を務めるのは『孤軍破狼[シャロウ]』というユニークモンスター。

 森羅万象から自身の配下である狼を生む。
 そんな強大な相手を前に……俺は、とあるロマンアイテムを使うことを決心する。

「来い──[アライバー]!」

 突如叫ぶ俺、訝しむ家族だが……それは驚きへ変わっていく。
 俺の上空に不思議な穴が生まれ、そこからゆっくりと落ちてくる物を──者を見て。

「説明しよう! 正式名『単独生存特化型魔道操機[アライバー]』は、俺専用のロボットのことである! なお、ショウの分は絶賛製造中!」

「凄い、マジで凄いよ父さん!」

「アナタ、凄すぎるわ!」

「…なに、その解説調」

 三者三様、違った反応を示した。
 空から降ってきたのは人の形をした機械。
 通常の人間よりも二回りほど大きいうえ、内部にコックピットが用意されている。

 そんな俺専用機に乗り込むと、ショウは期待感に胸を躍らせてくれた。
 ルリは純粋にロマンへの感動、マイは……年頃の女の子には合わなかったようだ。

『三人とも、ここは俺に任せて先に行け! 俺のことはいい、すぐに追いつく!』

「凄い死亡フラグ……けど、分かった!」
「お父さん……でも、たしかにそれならいけるかもしれない!」

『ルリ……二人を頼んだぞ』

「ええ。アナタ、この闘いが終わったら言いたいことがあるの……また会いましょう」

 俺とルリは死亡フラグを重ね、この状況を満喫する。
 やっぱり、こういうことを言っておかないとロマンじゃ無かろう!

 そして、現存する狼たちに向けて──

『──『ロックオンレーザー』!』

 機体から発せられるのは赤い光線。
 それは[シャロウ]以外のすべての狼たちに命中して……何も起こらない。

 当然だ、これはあくまでも下準備。
 油断して、俺を相手に驕った狼たちを捌くための儀式。

『──『銃殺の弾丸』!』

 レーザーと同様に、銃弾が機体から一気に発砲される。
 狼たち、そして家族へ向かう弾丸は触れた対象すべてを絶命へ追い込む。

 ……だが、家族の下へ向かった弾丸はすべて途中で軌道を変える。

 代わりに殺されるのは当然、至る所に現れ出した大量の狼たち。
 三人が[シャロウ]へ挑む道を切り開いていくように、数をどんどん減らしていく。

『これで終わりだ──『凍死の寒矢』!』

 銃弾が物理的に命中しなかった狼たちへ向けて、今度は通過でもなんでも干渉さえすれば、どんな概念だろうと凍結させる矢を飛ばして──宣告通りの結果を生む。

 あとは[シャロウ]を倒すまでの間、魔物が現れた瞬間に自動迎撃するようにプログラムするだけでいい。

 この機体の問題は度外視し、できる限りのことをすると覚悟を決める。
 ……うん、この兵装って全部これ用に調整しないといけないんだよなー。


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