虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

家族冒険 その15



「ルリが加わると、また快進撃が一気に加速したな……うん、解体ばっかりだ」

 レアな素材が大量に手に入るので、俺もついつい解体作業ばかりやっている。
 出てくる魔物も強いはずなのだが、それらは家族によって簡単に倒されていく。

 何より恐ろしいのは、ルリの支援系魔法の効果……『援天』の力によって、ショウとマイの力が何十倍にも強化されている点だ。

 基礎値が高いからこそ、強化される能力値も向上している。
 現在の階層──二百五十層のボスですら、俺の力が不要というだけで善戦していた。

「スキルが無いうえ、素地が低すぎて何も協力できないんだよな……『死天』有りならともかく、やっぱり弱い」

 ちなみにボスはそれっぽくドラゴンだ。
 激しい息吹を吐きだし、鋭い爪と牙と尻尾で接近するショウを打ち払おうとする。

 しかしルリによって強化されたショウは、そのすべてを躱して剣を当てていた。
 反射神経や動体視力を上げるスキルもあるらしいが……ショウの場合、無いんだよな。

「自前だから凄い。さっき、そういう魔法も覚えたけど俺じゃあ効果が足りない」

 魔法の効果は籠める魔力、そして職業補正やその他のスキルで決まる。
 俺にはそれらが無いため、魔力量でしか強化が行えない。

「……なあ、ルリ。俺って何をすれば活躍できるんだろうな……」

「うーん……肉壁?」

「ごもっともで」

「あっ、それにポーションを使えばいいと思うの。アナタのポーション、実は結構大人気なんだから」

 ルリの教団にもポーションを売っていた。
 ギルドを仲介して利益を得ることは忘れていないのだが、少々色を付けてやってます。

 ……ただし、蘇生薬などの禁制品はルリに直接渡している。
 アレは世に出ると不味いので、使ったら再度補充という形にしているのだ。

「強化ポーションもそういえば売ってたな。アレって、どれくらい効果があるんだ?」

「えっと……使用者はたしか、180%の補正が入るって言っていたわ。それが一時間」

「1.8倍か。俺のステータスだと、何も変わらないからな」

 もちろん、生産時に『SEBAS』が調べているんだけどな。
 そのときは200%を二時間、と言っていたので希釈したから分からないのだ。

「ふむ……ルリの回復魔法、そういえば全然使わないな」

「二人とも、自分で回復できる手段を持っているみたい。アナタ、私も最初に仕事をしたら出番が無いのよ……」

 ショウは攻撃するとダメージに比例した回復、マイは従魔の力を宿すことで得られる自動回復が機能している。

 たとえソロでもやっていける、それが二人の凄いところであった。


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