虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

ヴァルハラ その17

連続更新です(12/12)
===============================


「──『白氷』」

 最北で遭遇した『超越者』の名を告げ、とあるアイテムを散布する。

「──『冬眠の万雪』」

 水分を操る権能が、ばら撒かれたそれをすべて操作する。
 種族や職業も含め、適性が高い本人はともかく、俺の場合は制御能力がほとんどない。

 なので、本来ならすべてを操ろうとすれば脳が焼け切るレベルの処理能力を要するのだろうが……『SEBAS』が代理で演算するため、そこは気にせずとも操作可能だ。

「もっとも優しい終わらせ方なんだが……ダメか?」

「「──“カノ”!」」

 かつて『騎士王』が見せてくれたルーン文字、それを彼女たち戦乙女も行使した。
 ただし、あのときと違って戦闘のためか、その火力も尋常ではない。

 発動したそれは雪を融かし、地面に大量の水を生みだしていく。
 ……まあ、ルーン文字って北欧の方で生まれたものだから、精通しているのだろう。

 星渡りの民も、この世界出身の奴という意味だったのかもな……なんてことを考えながら、追加でアイテムを行使する。

「──『死電の雷流』」

「「……ッ!」」

 そこに電気を流し、水を通じて攻撃を二人に仕掛けた。
 水分操作が権能なので、電流を通しやすくすることもできる。

 空に逃げようともすべてが無駄。
 権能は水すべてを司り、彼女たちを追い回すようにうねりだした。

「さらに、なんちゃって『水玉ウォーターボール』!」

 水分を一つに集め、球を生みだして二人に向けて飛ばす。
 予想外だっただろう、二人は死角から放たれた球を真面に受けてしまう。

「──“イス”」
「──“ラーグ”」

 アインヒルドは水のルーンを、戦乙女リーダーは氷のルーンを発動する。
 水のルーンは無理矢理軌道を捻じ曲げ、氷のルーンは水を凍らせていく。

 はたして、どちらが正解だったのか……それはすぐに分かる。

「残念、どっちも不正解」

「「……きゃっ!」」

 水分操作、それは固体だろうが液体だろうが関係なく発動する権能だ。

 そのため、アインヒルドにはさらに軌道が変更された電撃が混ざった水が。
 戦乙女リーダーには固まった氷が向かい、そのまま鎧越しに衝撃を与える。

 電気を喰らい、アインヒルドは消えた。
 しかし戦乙女リーダーは、氷を物理的に受けただけなので……どうにか残っている。

「正解ではないが、氷にする方が正しかったわけだ。というわけで、残ったのはたった一人……降参するか?」

「いえ……たとえどんな状況であれば、戦い抜くのが私たちの使命。よろしくお願いします──最期まで」

「……ああ、分かったよ──『騎士王』」

 そして、最後の試練の幕が下りる。
 これでようやく、最後のアイテムが手に入るわけだ……いや、貰えるよな?


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品