虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
冥界狩り その06
「──で、こうなるわけか」
激しい攻防が繰り広げられている。
拳と拳がぶつかり合い、時に物理攻撃とは異なる方法でエネルギーを飛ばしたり……。
要するに、今回は嵌め技はあまり使わず正攻法で挑むようだ。
なぜかというと、目的の品にその理由があるらしく──
《今回求めるアイテムは『邪悪な魂魄』という品なのですが、旦那様の『死天』やモルメスでは魂魄に多大な影響が出てしまう可能性が否めません。ですので今回は、通常戦闘を行い弱体化を図ります》
「通常戦闘ね……まあ、たまには普通の戦いもやってみたいけどさ。どうやろうにも、体が弱すぎるから関係ないんだけど」
なんて会話もあって、俺は拳と拳で語り合いをしながら遠距離で仙術を行使するなど普通の戦いをやっている。
相手も瘴気っぽいのを集めてはなってくるので、負けじとぶつけているのが現状だ。
「──“千変宝珠”!」
魔術も行使するのは、仙人たちにはできないまだ『騎士王』にもできない俺だけの術の使い方……いやまあ、教わったらすぐにでもできそうだけど。
ともかく、魔力が浮かび上がり付き従う。
仙術は自然に働きかけるモノなので、全然使えていなかったのだ。
いちおう『闘仙』さんの仙術(物理)の方はここでも使えるんだけどな。
相手が霊体ということもあって、二次被害で隙を狙う『地裂脚』などは使えない。
それを補うにも、魔術は向いていた。
最強級の魔術は三つしか持ち合わせていないものの、時間もあったしオリジナル魔術も少しずつ開発している。
……とは言っても、今は『SEBAS』の指示に従って戦うのみ。
展開した“千変宝珠”に【勇者】の力を籠めて、光る球体にする。
破邪の力も籠もったそれを使うことで、戦いはさらに有利なものになっていく。
「仙術──『雲縄』!」
一瞬の不意を突きたく、予めチャージしておいた仙丹を消費して仙術を使う。
縄のように雲が魔道具から飛びだすと、邪の魔人を縛りあげる。
それはブチブチと剥がされていく。
だが、そのほんの一瞬があれば次の行動に移ることができる。
「魔術──“孤絶ノ衣”」
存在ごと辺りに掴ませない魔術。
予想通り邪の魔人は俺を見失い、辺りを破壊しながら捜索を始める。
あとは少しずつ溜めていた【勇者】の光を“千変宝珠”に一気に籠めて──死角から邪の魔人へ放つ。
「形状変化──『刀』、『居合』」
形を変えたそれを握り、【刀王】がかつて放った一閃を再現する。
邪の魔人は一瞬停止した後、自身に変化がないことにニヤつき俺を殺す。
「……はい、それじゃあご苦労様っと」
それが最後の攻撃だった。
邪の魔人が体に違和感を感じると、なぜか視界が引っくり返ったことだろう。
──奴の頭は、すでに地へ墜ちたからな。
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