虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

冥界狩り その01



 光と闇属性の魔物が出る迷宮ダンジョンの場所を、タクマから訊いた翌日のことだ。

「それで、比較的簡単に行ける場所ってどこか分かったか?」

《はい。しかしながら、旦那様のこれまでの活動範囲と比べるとどこも遠く、相応の移動が要されます》

「普通は、便利な魔道具があるから行っても構わないんだが……絶対、絡まれるよな」

《おそらく。しかしながら、闇属性に関してはすぐに向かえる場所に心当たりがございます。そちらへ向かわれますか?》

 俺も『SEBAS』も、移動するたびに揉めることを分かっているのであまり遠出をする気は無かった。

 そこで渡りに船の『SEBAS』の提案。
 当然乗った……と言いたいところだったのだが、ふと別のことを口が語る。

「なあ、『SEBAS』。それってもしかして……冥界か?」

《はい。あそこには、邪に属する存在も多くいるでしょう。『冥王』との交渉もありますが、それをしてもなおのメリットがあると思われます》

「そういうものか……まあ、あのときも行かなかったし、今回は行ってみるか」

《ありがとうございます。では、そのようにスケジュールを組みましょう》

 ちなみに、スケジュールと言っても俺が何か言えば即座に書き換わるガバガバなものである……あくまで、何をするのか忘れないために頼んだものだからな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 冥界

「……それで、ここに来たと」

「邪に属するなら、強ければ正直何でもいいからさ。駆除しようとしているヤツが居たとかでも、今回は請け負うから」

「……前回のアレもあるし、断るわけにもいかないわね。まあいいわ、一ついい場所を教えてあげましょう」

 事情を説明すると、『冥王』はこれまた案外あっさりと狩場を教えてくれた。
 冥界というだけあり、広大で制御できていない場所があるんだとか。

「その地の名は『妄失の荒野』、記憶を捨てまいと抗う悪霊たちの住処。その奥に君臨するのが、邪に属する魔物よ」

「具体的にどれくらい強いんだ?」

「普通の兵じゃ太刀打ちできないわね。奥の方に引き籠もっているから、こちらからは何もしないで放置している。今回頼んだのは、ちょうどよかったからよ。攻めてこないかの防衛線も変更できるわ」

「ふーん、俺としては助かるからやらせてもらうぞ。いちおう自分から断っておくけど、今回取ったアイテムの持ち帰りを許してくれるならそれが報酬ってことでいいぞ。あと、強い人との交流ができるのも報酬か」

 ついでに、その防衛線とやらで商売もできるだろう。
 ……お金が使えるかは微妙なだし、あくまで物々交換でだけどな。


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