虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

不死鳥 後篇



「『覇獸』を不死鳥で10%に。【魔王】を80%で『騎士王』を10%でやってくれ」

《畏まりました》

 指示によって、他者の権能を用いるために必要なアイテム『魔王の取腕』が、発動する権能再現の比率を変えていく。

 そして、体に情報が流れる。
 目の前で蘇った不死鳥の能力が、自然と脳内で理解できるように……そして、再生の原理が判明した。

「この状態なら、奪えるな……行くぞ」

《畏まりました──ドローン展開、攻撃・補助の実行します》

 用意してもらったドローンを足場に、火口の中へ進んでいく。
 不死鳥は侵入者である俺を迎撃するため、威嚇しながら突っ込んでくる。

 今回は『死天』謹製のアイテムを使わず、代わりに石ころを取りだし──魔力を流す。

「──魔術“千変宝珠”」

 これは俺が『騎士王』に創らせ、彼女自身にも気に入ってもらった魔術だ。
 発動すると、魔力でできた球体が俺の周囲で漂うようになった。

「形状変化『槍』」

 コマンドを告げると、球体は変形する。
 鋭い槍が形作られ、そのまま不死鳥へ向けて飛んでいく。

 だが、『死天』のアイテムと違って即死級の能力があるわけでもないので、それは普通に刺さるだけ。

 その分、生命力が微量に減少する……それこそが狙っていた現象だ。
 一気に奪うでも即死させるわけでもない、少しずつ減らしていくのが求められていた。

 その点、今回の魔術はそれ自体は普通に魔力を使って攻撃を行うだけなので、器用さと魔力しかない俺にはもってこいの魔術だ。

「形状変化『盾』、あとは……これだな」

 槍がある程度ダメージを与えられることを確認したので、それは魔術は盾状態にして別の安全な戦い方を実行する。

 それはかつて作った便利な光子銃。
 やることは簡単、引き金を引くだけ──それだけで銃口から光で生成された弾が発射されて不死鳥に穴を空ける。

 だが、これまでと違った異なる鮮やかさを持った焔が不死鳥を包む。
 すると、空いた穴が癒えていく……これが不死鳥の持つ“再生の焔”という能力だ。

「条件一、“再生の焔”が発動中でなければならない」

 即死ではダメなわけだ。
 小さな穴をいくつも空けながら、ゆっくりと不死鳥を弱らせていく。

「条件二、膨大な熱量に浸かっている状態でなければならない」

 穴が空けば空くほど、不死鳥は焔を多用して生き永らえようとするわけだ。
 しかし、自前の焔ではどうしようもないと察し……マグマの熱を使おうする。

「あとは──形状変化『網』。最後に殺して奪えばよしっと」

 盾が不死鳥に近づくと、突如その形を網に変えて包む。
 燃やそうとも燃えないその素材に、不死鳥は抗うも何もできずマグマに墜ちる。

「これで終わりだ──『砲弾』」

 銃口の大きさをはるかに超えた、巨大な弾が発射された。
 不死鳥は逃げられないため、そのまま体を破壊されて死んで逝く。

「あとは……奪え【魔王】」

 ボウッと、上に向けた掌に焔が燈る。
 それこそが『不死鳥の死焔』、これにて閉幕……いやー、長かったものだ。


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