虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

困難な素材集め



 着々と成長する【勇者】。
 侵略者との戦いもあったからか、レベルはすでに10ぐらいだ。

 職業能力が少し成長し、スキルを獲得できたりもしたが……どうせ就いている間だけのこと、カンストさせなければ別の職業へ引き継ぐこともできない。

 そう、これまでと違って全然レベルが上がらないという事態に陥っている。
 解放するために必要だった経験値が多いのだから、上げるのもまた困難だった。

「あれだけやってもか……ヤバいな」

 まあ、それでこそやりがいを感じるという側面もあるにはある。
 だが、それ以上にこれまで感じたことのない……いや、懐かしく思う感覚が目覚めた。

 作業ゲー、つまり飽きが生じるような行程のことだ。
 これまでは異常なほど成長していたが、種族レベル並みに上げるのが面倒臭い。

「こう、【勇者】なら成長補正とかポイント割り振り自由とかそういうサービスがあってもいいだろうに……」

《後者は可能です。しかし、旦那様が割り振ることができるのは……》

「ああ、そうだな。魔力と器用さしか上がらないもんな」

 職業スキルの効果で増やせるようになったが、今さら上げたいものもないし、結局は虚弱体質のままだ。

 まあ、だからこそ経験値ボーナスを貰えているのであまり強くは言えないんだけど……もちろん、クレームを。

「そういえば『SEBAS』、そろそろ完成するか?」

《申し訳ありません。未だに足りない材料がございまして、迷宮での準備をすることもできておりません》

「……『運天の改華』、やっぱり作るには面倒な過程がありそうだな」

 少ーし前のことだが、先代『錬金王』から訊いた職業を変える方法。
 それこそが『運天の改華』、職業を強制的に【見習い】シリーズへ変えられるらしい。

 だがそれを作るための材料は、絶滅危惧種の物ばかり……なので俺は未だに手に入れられず、【勇者】プレイを続けていた。

 魔物ではない素材はだいたい集めたが……やはり、そこが問題だ。
 ある程度は、それでも前回の迷宮イベントで手に入ったんだけどな。

「足りない素材はどんな物だ?」

《不死鳥の死焔、聖邪の毒薬、神族の血……これらが欠けております》

「……いろいろとツッコみたいけど、それって:DIY:で用意できないの? 二ぐらいなら成功しそうだけど」

《完成したものですので、前提となる聖と邪に属する魔物からアイテムをドロップしなけれ製作できません》

 普通じゃ手に入らないモノばかり、そりゃあ作るのも諦められるわけだ。
 ……というか、昔の人たちはどうやってこういうレアアイテムを集めていたんだか。


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