虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

逆侵攻 その08



「──で、結局どうだったんだ?」

「現在調査中だ。『生者』のように、誰もがすぐに問題の解決を行えるわけではない」

「……俺もそんなに凄くは無いんだがな」

 とても優秀な『SEBAS』が居てくれるからこそ、俺の情報収集能力が凄いように視えているだけ。

「だが、少し判明したこともある。奴らは単一の細胞でできた、寄生生命体……それ以上に、あの中継点からは他の生命体の反応が何もなかった」

「…………つまり、あの惑星には侵略者しかいないのか?」

「察しが良いな、その通りだ」

 すぐに『SEBAS』が教えてくれた。
 侵略者の正体は核を持ったアメーバのような物で、あの滅んだ世界に漂う霧の適性を得ることでどうにか生き延びた生命体だと。

 世界がそうなることを強いた、故にそうならざるを得なかったらしい。
 まあ、だからと言って、侵略者に容赦するつもりはまったくないんだけれども。

「とりあえず、あの世界は『滅亡世界アンノウン』と改名した。また、侵略者にも新たに『バシビウス』と名を付けた」

「……その理由は?」

「無論、その方がイイからだ」

 何がいいのかさっぱりだ。
 ちなみに『SEBAS』によると、その名前は地球において深海で発見された……と思われた、架空の原始生物らしい。

 なぜそれなのか理由は不明だが、冒険世界には存在しない未知の存在という意味ならばあながち間違っていないだろう。

「まあ、別に呼び方は好きにしろよ。世界の方はなんとなく納得がいくからいいけど、侵略者は面倒だしそのまま勝手に呼ぶから……ところで、このまましばらくは手を出さないのか? 俺はその方が楽だからいいけど」

「……どうして使ってくれない。まあ、片方だけでも採用されたことを幸いとしよう。逆侵攻については、あの中継点を調べ尽くしてからだ。万全の策を以って挑まねば、私たち以外が苦労してしまう」

「……俺も、苦労させない奴の方に入れておいてくれませんかね?」

「『生者』ほどの者を手放しておけるほど、侵略者との戦いは楽なものではない。彼の聖獣ですら侵すことのできる力を、『生者』はその身を以って知っているのだろう?」

 まあ、たしかに身を以って知っているな。
 俺はなんせ侵略者の能力を、自分の体で操ることができているわけだし。

 侵略者はだいたい休人たちでも対処できているらしいが、中継点とは異なる上位個体となるとショウやマイ、ルリと並ぶ実力者が居ないと苦戦するらしい。

「けど、できるだけ楽をさせてくれよ。あんまり自由が無いのはこりごりだ」

「では、早く侵略者の来ない世界にするのだな。話はそれからだ」

 ……それ、いつになるんだよ。


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