虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

迷宮イベント その05



 迷宮核ダンジョンコアの間に辿り着く。
 いつものように内部の情報を解析し、使用されていたシステムを俺の世界の迷宮でも使用可能にする。

「──さて、正当な報酬を頂こうか」

 核に触れれば、いつものように何かしらの報酬が与えられるだろう。
 おそらく新規の加護は無いだろうが、それでもアイテムが手に入る。

《旦那様、おそらくそれは無いかと》

「ん……なんでだ?」

《試練であればそれも可能であったかもしれません。ですが、通常の迷宮であれば旦那様には最高級の報酬が与えられます》

「…………ああ、そうだったな」

 まったくと言っていいほどに、恩恵にはあやかれていないもの──迷宮を支配権を得られるというモノだ。

 宝箱の調整もできるので、本来であればどういった物であろうと迷宮に取り込ませることができれば、なんでも手に入れられる……はずだったんだがな。

 縛りプレイの影響か、核のコピーによって他の迷宮から情報を取り込まなければ新規のシステムを追加することができない。

「まっ、細かいことを気にしている暇はないけどな」

《はい。ドローンによる映像解析によれば、おそらく残り数分と言ったところです》

「報酬に時間が掛かるかもしれないしな……早くやろうか。それ、ポチッとな」

 雪による強制帰還が発動するか分からないので、迷わず核に触れた。
 すると予想通り、いつも通りアナウンスが発生し──

  □   ◆   □   ◆   □

 未踏破ダンジョンの単独攻略を確認
 対象にボーナスを付与します

 CHECK
 対象に特定の能力を確認

【救星者】──確認
『超越者:死神』──確認
 祝福──確認

【救星者】の拡張……成功しました
『超越者:死神』の拡張……成功しました
 祝福を解放……成功しました

【救星者】は『生者』とリンクし能力の拡張を実行しました
『超越者:死神』は【救星者】とリンクし能力の拡張を実行しました
 祝福(■■神の祝福)は(医療神の祝福)に変化しました

【救星者】による攻略のため、ダンジョンコアの正式移譲が行われます……成功しました

 以降、当ダンジョンは【救星者】の管理下に入ります
 以降は自己で調整してください

  □   ◆   □   ◆   □

 イベント世界

 あれからすぐに外へ出た。
 強制的に排出された場合、また迷宮の内部だからな。

 すぐに外の休人用に準備されていたっぽい転送陣を使い、外側の入口へ出た。

「……うん、やっぱりこっちになったか」

《リンクに関する情報をすぐに調べます》

「ああ、それはすぐに頼む」

 あまりいい報酬は無いかと思っていたのだが、まさかの能力拡張が実行されていた。

 前回の拡張は称号を追加で一つ付けられるというものだったが、それだけでも充分強くなれるだけの素地を得たわけだし。

「成績的には、これで俺が一歩リードってことになるのかな? さて、『SEBAS』どうなっているんだ?」

《すでにいくつかの迷宮が踏破されているようです。ですが、難易度的には旦那様の踏破なされた迷宮がもっとも上ですので、おそらくは上位になっておられるかと》

 いつまでもうかうかはしていられない、というわけだ。
 今回のイベント、踏破だけがポイントではないらしいし(byタクマ)。

 そうであったなら、強いヤツだけが優勝という結果で終わってしまう。
 すべての参加者・・・に等しくチャンスを、それが今回は考慮されているんだとか。

 ──そう、最悪すべてこちらの人々がランキングを埋め尽くすかもしれないわけだ。


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