虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

白氷 後篇



「──遊びに来たんだよ! だってほら、面白そうだったし!」

 一言で理由を纏められてしまう。
 わざわざ高級な蜜を使わずとも、粗悪品でも良かった気がした。

「暇潰しにお城を作ってたら、なんか凄く吹雪いてくるから吹き払って―。そしたら急に変な天使が来たんだよねー」

「それがあの死徒様でしたか」

「そうそう、たぶんねー。いろいろとやってみたんだけどー強いね。で、少しずつ体が動かなくなったと思ったら……急に目の前にオジサンの顔が現れてビックリ! という感じだったかな?」

「…………そ、そうですか」

 一瞬、『死天』のアイテムをぶちまけてやろうかとも思ったが、妖精と人ではもともと寿命が違うと自分を誤魔化し、息を整える。

 それに、見た目に関しても否定はできないわけだし……全然年を取らないうちの妻は、何か特殊な加護でも授かっているのだろう。

「まあ、御無事で何よりです。こちらでも把握している情報をお伝えします」 

「……ん?」

「こちらに『白氷』様が居ると判明した時、ある程度情報を集めさせていただきました。休人……いえ、星渡りの民のことをご存じでしょうか?」

「えっとー、最近現れた人たち?」

 俺たちがログインするようになったのは、彼女が封印されるようにも後の出来事だ。
 覚えているかどうかだけは不安だったが、どうやら覚えていたらしい。

「この地は彼らのために、用意された試練の舞台。そのため『白氷』様が理から外れ、この地に降り立ったことは想定外。ゆえにこの地へ死徒様を向かわせたのです」

「……ふーん、ずいぶんとはた迷惑な人たちなんだね」

「私もその一員ではありますが、特に望んでいたわけではありませんよ。たとえるならそう、神の悪戯とでも言っておきましょう」

「そりゃあ、死徒を用意できるのは神だけだと思うけど……」

 死徒、そして使徒だから当然だ。
 運営が使徒を動かせる辺りから、いちおう神扱いをしていいと思う。

「──とまあ、そういった事情でした。何か思うところはございますか?」

「ううん、別になんにも。悪戯だって、バレた方が悪いんだもん、だから、今回は私の方が負けただけ……けど、次はそれ以上にいい作戦を考えるもん」

「……そう、ですか。では、私は応援することにしましょう。神をも出し抜くという、貴女様の悪戯とやらを」

 本当に気になるところだ。
 あの『騎士王』辺りは逸脱しているが、それ以外の『超越者』がどこまでできるのか。

 知っておいた方がいいだろう、影響が家族に及ぶ前に。


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