虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

央州戦線 その04

連続更新中です(02/12)
===============================


 原付きは隠し、案内してもらう。
 時間帯は夜、それでも徘徊する見張りを避けながら一軒の家屋に辿り着く。

 その建物の戸を叩くと、『宣教師』は何やら声を出し始める。

「えっと……『寝耳に水を』」

「……『流して穿つ』」

「『相手は上に』」

「……入れ」

 なんだか意味が分からない暗号によって、扉を開けてもらえることになった。
 中に居た男が俺の方を一瞥したが、すぐに『宣教師』が事情を説明して……喜ばれる。

「なんと、『超越者』様がもう御一方! 皆も喜ぶでしょう!」

「……あはは。とにかく、アレを開けてくれるかな?」

「分かりました。『生者』様、くれぐれもこのことはご内密に」

「ええ、お約束しましょう」

 そういったやり取りをしてから、部屋の下に隠されていた道から地下へ移動する。

 ちなみに俺は気づいていた……だって、死亡レーダーの精度を上げると、ガンガンに地下から反応があったわけだし。

「ここから先は、迷路のような構造です。迷わないよう、ついてきてください」

「分かりました」

 休人全員に備わっている[マップ]機能によって、視界に収めた地形ならいつでも分かるようになる。

 なので一度迷っても問題ない……それ以前に『SEBAS』の補助があるので、いつでも座標が分かれば飛べるんだけどな。

 ただ、転位も転移も使えることは言わない方がいいだろう。
 バレても転位だけ、神代技術や膨大な魔力が必要な魔法としての転移は隠したい。

 ──好きな場所へ自由自在、なんて知られると面倒臭いからな。


 閑話休題ひとくじこう


 クネクネと進んでいるのだが、案内人曰く出口は無数にあるんだとか。
 ただし入口の数が少ないようで、入った場所もその限られた隠し場所の一つらしい。

「──着きました、こちらです」

 そこは少し広い広間だった。
 百にも満たない人々が集まっていて、戦意満々で俺たちを見つめている。

 毎度のことながら、そういう目って俺を殺しているんだよな。
 俺に期待をしているのであれば、何もしないことが殺さない唯一無二の手段なのに。

「よくぞ戻ってきてくださった、『宣教師』殿。そして、歓迎するぞ『生者』殿」

「ただいまー」
「……お世話になります」

「うむ。して、『宣教師』殿。例のものがどうなっているのかを聞かせてもらいたい」

「そうだね。とりあえず先に大まかなことを言っておくなら、東西南北すべての五州が強力に応じてくれたよ。やっぱり、それぞれ思うところがあったみたい」

 それだけでおーという声が上がる。
 そして、ここから詳細な説明が始まり……俺は聴覚を『SEBAS』に委ねた。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品