虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

央州戦線 その03

月末更新をやっています(01/12)
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「あっははは、助かったよ」

「……それで、どうしてあのような方法で乗ることを選んだのですか?」

「あっ、やっぱりバレてる?」

「たしかに逃げなければならなかったでしょうが、あのようにして逃げる理由とはなりません。他にも穏便な手段が、いくつもあるというのに」

 それこそ暴いた権能を使ったり、魔道具で意識を奪うことだってできる。
 それでも逃げることを選んだのは……原付きに乗りたかったからだ。

 実際、ニコニコと笑みを浮かべているのが何よりの証拠。
 俺の死亡センサーは反応していたので、対処する必要はあったんだけどな。

「ごめんよ、『生者』君。どうしても乗ってみたかったんだよ。一度見れば、なんとなく使い方も理解できるからね」

「そんなことをせずとも、マニュアル……使い方を記した本を渡しましたのに」

「いやー、僕そういうの苦手。教えることは上手いんだけど、自分で学ぶのはあんまり。やっぱり、体で覚えるのが一番だよ」

 ……なんだか『宣教師』とは思えない発言だが、それってどうなんだろうか?

 実際に会ったことのない宣教師のことはともかく、目の前にいる『宣教師』は体に叩き込む派なのかもしれない。

「……ところで『宣教師』様、協力者によって障壁を解除するという話でしたが。そちらの方は大丈夫なんでしょうか?」

「あー、うん、そっちは大丈夫……けど、いけないな『生者』君。いつまでも他人行儀なのは。君みたいな子は遠慮とかするんだろうけど、せめて呼び捨てかさん付けぐらいはしてほしいね」

「…………とりあえず、さん付けで」

「うん、今はそれでいいよ。えっと、協力者だったね。央五州の将軍が原因っていうのは教えたよね? ほとんどの人は将軍の味方に付いちゃったけど、そうじゃない人もいる。その一人に、援軍を連れると話したんだよ」

 物語でも定番な、反乱軍とかレジスタンスとか言われる人たちだな。
 しかし援軍って……ああ、そういえば最初は他の五州の人たちの予定だったんだっけ?

「私一人ですけど、大丈夫なんですか?」

「そりゃあもちろん、何せ『超越者』だからね。『生者』君は中でも今の状況に適しているし、ぜひ協力してもらいたい」

「それは、やらせていただきますが……力になれるかどうか」

「大丈夫だよ。君を見て、すでにいくつかプランを考えてある。君がそれを行うのか、それとも違うことをするのかは自由。ただ、情報整理の糧にしてほしい」

 場所を変えよう、そう言ってくる。
 俺としても……いつまでも空に居るのは疲れるので、そろそろ例のグループと合流することにしよう。


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