虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
住居改造 前篇
アイプスル
「うーん、こんな感じか?」
《いえ、やはり図面通りであれば伸ばした方がよろしいかと》
「そうかな? 俺としては、やっぱり一定の長さで維持した方がいいと思うんだが」
《旦那様。非日常を認識させることが、必要となると思われます。完全な再現をしてしまえば、認識の齟齬に苦悩する可能性もあるかもしれません》
やはり『SEBAS』に相談して良かったと、心の底から感じる。
自分には無い意見をズバッと言い、それがすべて裏目に出ることは無いのだから。
「けど、優れすぎる物を置いておくのもおかしく感じるんじゃないか? やっぱりこう、質素な感じで……だがそれをやると、せっかく用意した仕掛けが台無しになるのか」
《いえ、そうとは限りません。数を最低限とし、使用しても違和感の無い箇所に配置すればまったく問題ありません》
「……そういうものか?」
《そういうものです》
今回の問題に、あまり俺は強い主張を持つわけでもないので『SEBAS』の意見を取り入れて改めて作り直す。
「──イツキ邸を目指して」
《頑張ってください》
まあ、要するにそういうわけだ。
◆ □ ◆ □ ◆
前回の訪問時、三人にはそれぞれ用意した好きなタイプの住居に泊まってもらった。
それは今回の布石、そのデータを基に新たなイツキ邸を作りだす。
木材には『真・世界樹』の極太な枝を採用し、その他の材料もすべてがアイプスルで採れる貴重なアイテムばかり。
すぐに:DIY:で生成、ということもせず可能な限り自力で行っている。
もちろん補正は受けているものの、それはあくまで理想を形にするためだ。
「……外見だけはまずできた。まあ、すでに何度もやっているからな」
《レイアウトは私にお任せください。旦那差は魔道具の作製と設置のために必要な準備をしておいていただければ助かります》
「ああ、任せておけ」
非日常を捉えれるよう、世界樹の苗木を庭に植えておく。
ついでに電化製品が在った場所にはいくつか魔道具を並べ、その代わりとする。
電気を用意するのは容易いのだが、さすがにそれ以上を求めるのは……なあ。
この世界ならば、いっそのこと魔道具化した方が手っ取り早いのだ。
「あとは水道とかガス代わりの魔道具か……これは埋め込み式だし、場所を確保するか」
台所や浴室などには、現実の家には無い窪みのような物が存在する。
それらは魔道具を埋め込むための場所なのだが……うん、このままでは味気ない。
「周りを軽く装飾する、ぐらいか? 直せるようにしておけば、あとでいくらでも修正できるよな。よし、まずはやってみよう」
──そんなこんなで、家族を迎えるために再びアイプスルの改修を始めるのだった。
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