虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
ギルド問題 その07
「──というわけで、依頼は完了です」
「ほ、本当に……署名が入っている」
「私の目の前で書かせましたので、嘘偽りはございません。契約に従い、彼らはあなたを見定めるためにギルドへ戻ってきます」
錬金術師も快く許諾してくれたので、そのサインも入った契約書をギルド長に渡す。
これはギルド長が俺に渡したモノで、もう一度機会が欲しいという旨が記されている。
俺の仲介もあって、彼らは生産ギルドを先代とは違う在り方であると分かろうと……歩み寄ろうとしてくれた。
まあ、意地のようなものもあったらしく、すんなりと行ってくれた人もいたんだけど。
「まさか、全員が同意してくれるとは……私たちで交渉に向かった際は、追い返されることもあったのだが。何より、重傷となってギルドを止めさせられた者も居たぐらいです」
「……ああ、彼でしたらメリットを提示したら、すぐに頷いてくれましたよ」
「えっ、そんなまさか……」
「ええ、交渉を終えたところで、彼はとても嬉しそうでしたよ。きっとギルドのことを、誰よりも思ってくれていた証拠でしょう」
なぜか自分から吐いたのだが、この生産ギルドとの関係性を利用してお金を稼いでいたと言っていた。
生産ギルドを介さずに利益を得ていた職人たちだが、それでも価格に関してはかなり良心的なものを保っているのは俺も見ている。
だが錬金術師だけは、高値で吹っ掛けて利益を得ていた。
彼以外の錬金術師はある程度安く売っていたのだが、彼にしか作れない上位のアイテムとなると……誰にも作れない。
それで儲けていたんだとか。
……まあ、俺がそれ以上に高位のアイテムの数々を見せびらかしたら、交渉もよりすんなりと進んだけど。
「必要性、という意味でこれからこのギルドがどのように変わるか私には分かりません。彼らの協力は得られるでしょうが、根本的な問題は解決しておりませんので……これからに期待、といったところですね」
「分かっています。これからこのギルドが、城塞都市にも負けないギルドになるよう、これから励んでいきますよ」
「ええ、頑張ってくださいね。では、私はこれにて失礼します。直接ではありませんが、陰ながら応援しています」
「……! ほ、報酬を!」
報酬は要らないということで受けたが、ギルド長は何かくれるみたいだ。
いやー、本当は不要なんだけど、くれるというなら貰わないわけにはいかないよなー。
うんうん、別に欲しくて最初からそうしたわけじゃないが、くれるならしょうがない。
──さて、何を貰おうかな?
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