虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

鑑定の仕組み



 鑑定を行い、着実にレベルを上げていく。
 俺には“職業系統樹”があるので、職業にその先があるかどうかだけは理解できる。

 そして【高位鑑定士】にも、先があった。
 ただし正当進化である【鑑定王】は、誰かが先に就いているため就くことができない。

「そして、複合的な条件を持つ派生職業には就くことができない……だって、だいたいスキルが条件なんだから」

《【高位鑑定士】のレベルは、ただ鑑定するだけでは途中で止まってしまいます。複数の種類──人や魔物、アイテムを万遍なく鑑定することが条件となります》

「まあ、それぐらいならどうとでもなる……ただ、時間が掛かりそうだな」

《旦那様の鑑定では、隠蔽スキルを看破することは難しいですからね。そのうえ、下位のスキルである(鑑査瞳力)が失われたことで、さらに鑑定率が低下しておりますので》

 無くともどうにかなるが、有った方が鑑定の成功率は上がる。
 初期のスキルセット枠、そしてそれに伴う制限もあるが……そこは無縁だな。

 職業を重ねれば重ねるほど、あとでセットできなくなる数が増えるのだが……本当、システム外に取り残されているよな、俺って。

「アイプスルの魔物たちにも協力してもらって、とりあえず魔物の鑑定を済ませよう。あとは外で……これ、犯罪だっけ?」

《許可なく鑑定を行う行為は、町中では禁止されています。また、外で行った場合も最悪難癖を付けられ殺されますね》

「俺なんか、鑑定された側なのに殺されるのに……なんか理不尽だな。しかも、ちゃんと情報は送られる死」

 あながち間違っていない送信による死亡。
 これによって得られる『死天』製のアイテムも……あっ。

「これ、どういう効果だっけ? 鑑定で殺された場合に出てくるヤツ」

《効果は魔力波を送り、相手の波長を狂わせて殺すというものです。鑑定とはあまり関係が無かったため、話には挙げませんでした》

「……思いのほか、残虐な方法で俺って殺されてたんだな。一瞬だから気づかないけど、その一瞬でそんなことが起きてたのかよ」

《鑑定は魔力によって個人情報を開示させ、それを閲覧する権限のようなモノです。隠蔽の方が権限が高ければ、情報は開示されず閲覧はできません》

 権限のチェックのために魔力を用い、それが理由で死んでいたと……だからこそ、同様に生みだされるアイテムもそうなるのか。

「俺が指向性を持たせたら、変化を持たすことはできないか? せめて、カウンター式に鑑定を行うようにするとか」

《…………なるほど、可能かもしれません。鑑定そのものは、私やカエンでも行うことができます。試してみましょう》

 まあ、それとは別にアイプスルへ戻らなければならない……うん、なんだか最近はレベリングが楽しくなってきたな。


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