虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

聖騎士 前篇



「なるほどな、『生者』は【救星者】だったのか……これからはどちらで呼ぶべきか、悩むものだな」

「どっちでもいい……というか、よくもまあ最高レベルの隠蔽を看破するよな」

「こういったときは、『騎士王』の万能性にも感謝すべきだろう。知りたいと思うモノを己が瞳に収めることができるのだから」

 まあ、『騎士王』とは異常な存在だと前に【魔王】が言っていたっけ?
 人々の理想の具現、至高にして最強という概念を形にしたもの──それが『騎士王』。

 人にできることはなんでもできるので、当然鑑定や隠蔽を暴く看破なども可能だ。
 そして、そのすべてが達人の域にまで達しているので……あっさりと見破られた。

 だが、それだけではないらしい。

《『騎士王』は星の生みだした、対異分子用の迎撃用『超越者』。故に、同じく星の力を持つ【救星者】を視たのかもしれません》

 俺の職業たる【救星者】は、どちらかと言うと普通の障害を相手に何度も何度も戦えるように設定された職業だ。

 星の中で起きうる問題に、人の身で抗えるようになった……ぐらいの補正しか無い。
 だが『騎士王』はそうではなく、侵略者などの異常事態に対処する存在だ。

 それぞれ担当が違っている。
 ……まあ、それ以前に担当する星そのものが違っているんだけどさ。

「それで職業を偽装して、【高位鑑定士】となっているわけか。なぜとも思ったが……生産職には就かないのか?」

「必要が無いだろう? そうでなくとも、俺はお前のアレを創ったんだぞ」

「うむ、たしかにそうだな。……だが、それでも【鑑定士】か。『生者』、いっそのこと【聖騎士】になってみないか?」

「…………俺のステータスでなれるのか?」

 どうしてとか、どういう効果が、とかよりもまずはその点を確認しておく。

 あらゆる職業に就ける“職業系統樹”ではあるが、ステータスに関する条件が課せられているものもある。

 騎士、なんていかにも体力や攻撃力が求められそうな職業……虚弱スペックの俺が就けるのだろうか?

「騎士とは騎馬で戦う者のことを指し、戦士であることに拘ってはいない。『生者』は知らないようだが、金で職業に就こうとする者が居るくらいだぞ?」

「そうなのか? ……まあ、これまでは無縁の活動しかしていなかったから、全然知らなかったな」

「そうであったか……そして、【聖騎士】もまた地位的な捉え方がされている。私の配下である『円卓の騎士』たちは【円卓騎士】という13人しか就くことができない職業に就いているが……【聖騎士】ならば可能だ」

「…………とりあえず、就くための条件を聞かせてくれないか?」

 まだ謎が多い“職業系統樹”。
 その解明のためにも、まず職業解放について調べてみようか。


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