虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

地下街迷宮 その14



 アイプスル

「──なんてことがあったわけだ」

『それで、今は【救星者】であると?』

「そういうことだ。まあ、こういうこともできるようになったな」

 指をパチンと鳴らすと、俺の足元にポコッと葉っぱが生える。
 それを引き抜くと、話を訊いていたこの世界の守護獣の一体──風兎に提供した。

「星の活力を必要とするんだが、俺のイメージしたモノが自由に創造できるようになったみたいだ。ただし、生物は明確な意思を持たないモノに限るぞ」

『……旨いな』

「しかも、:DIY:が作用するから正確に、そして精確に創造できる……上手く相乗しているよな」

『本人は虚弱であるにも関わらずか。なんともできた話であるな。本来【救星者】とは、生きる英霊とも呼ぶべき存在なのだが』

 聖杯を取り合うことはできなくとも、最後まで生存することができそうだな。
 本来英霊とは契約云々ではなく、神に認められた使徒のような存在のことらしいし。

「まあ、実際守れているんだからいいじゃないか。もちろん、俺だけの力じゃなくて風兎や新人のあの子のお蔭だな」

『……まったく。【救星者】は星に危機をもたらすありとあらゆる障害に対処する存在。当然、相応の力を与えられるはずなんだぞ』

「本当、なんでだろうな?」

 すでに迷宮から出て数日が経過している。
 力の確認を終え、もしかしたら……と期待した事柄ができなかった絶望などもすべて済ませていた。

 ちなみに【救星者】……というか、職業には付き物という補正能力すら、俺のステータスに変化をもたらしてはくれない。

 いちおう職業スキルというヤツが新たに追加されたのだが、これまでやれたことを拡張しただけの能力……そして、今回もまたスキルレベルは存在しなかった。

「あっ、『超越者:死神』の効果は死神の加護の強化だったな。それに加えて、今回の拡張でなぜかサブ称号枠が増えた……これってなんでだと思う?」

『神による神練の結果だ。どのようなことが起きようと不思議ではなかろう』

「いやまあ、増えたのは別に悪いことじゃないからいいんだけどさ。もっとこう、特殊な力だと思ったんだよな」

 ただ、これで『貧弱な武力』と『闘匠』による 確実な戦闘勝利が見込める。

 必ず1ダメージを与える攻撃が、防御無視かつ非物理存在にも攻撃を与えられる……時間さえあれば確実に敵を倒せるだろう。

 まあ、それも再生系スキルを無効化しておかないと無理だけどな。

「とにかく、これからは正式にこの星を救う担当になった。風兎、いっしょに守っていこうぜ……何が来るか分からないからな」

『ふんっ、当然だ。森の民たちを守るのは、森獣であった私の使命だからな』

 たとえ強大な力を得ようと、結局俺がやることはさほど変わらない。
 一つやることがあるとすれば……家族も住みやすい星にすることぐらいだな。

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『■■世界の■■者』
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『原初世界の再星者』

『生■の創造者』
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『生命の創造者』
     
『天と地を■べ■者』
    ↓
『天と地を統べし者』

『■■の再■者』
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『創造の再星者』

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