虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

霊体の問題 その15



「──そのような事情があったのですか……分かりました、貴方がたを歓迎しましょう」

『ありがとうございます!』

「いえいえ、【幽王】様への叛逆も本意では無いようなので。きっと【幽王】様も、寛大な処置を致してくれるでしょう」

 俺の持つ(……ように見せた)力を知ったことで、一部勢力がこちらへ来てくれる。

 普通は裏切りをすれば処分対象だろう……が今回の場合、ドローンが助けてくれると伝えておいたのが功を奏した。

 反撃は行わないのだが、こちらへ来る者を阻む存在にだけ行動するのだ。
 結界を張ることで攻撃を防御したり……妨害工作を突破(物理)したりな。

「では、人形たちが境界線までご案内致します。以降はそちら側で待機している霊魔の方の指示に従ってください」

「は、はい!」

 代表格の霊魔がそう答え、引き連れた者たちと共に人形が築いた境界線を越えていく。
 この際、いっしょに身体検査なども済ませており……危険物の持ち込みは許さない。

「……よし、問題なし。まあ、先にチェックしていたから分かってはいたけどさ」

『心拍数や表情筋より、嘘偽りや罪悪感などは感じられませんでした。また、空間属性魔力による持ち込みや、体内に魔道具が埋め込まれているということもありませんでした』

「ご苦労様……さすがに人間爆弾みたいなやり方は急にはできないか。可能性はゼロじゃないと思っていたけど、それなら最初から潜伏させているよな」

 俺がそういった輩を見逃がすと、せっかく取り付けた約束も無駄になってしまう。

 なので面倒事はしっかりとここで押さえなければならない……だがそのうえで、争いを集結させなければならないんだよな。

『──残り五分となりました』

「もう、か……ゆっくり事情を聞いていたからそうなったのか」

 今回の叛逆を思いっきり分かりやすく纏めると──我が儘な独裁者の暴走だ。

 そういうヤツに限って、なぜかカリスマを持っている。
 自分は間違っていないという意志が、周りの者を強く引き付けるのだ。

 先ほどの亡命者たちは、そんな魅せられた者たちに従っていた者たちだ……無論、嫌々ではあるが。

 彼らは自分の意に反し、上からの命令と言うことで仕方なくあの場に居たのだ。

「それを聞いてどうするのか……まあ、それについていったどうしようもないヤツはともかく、巻き込まれた者たちぐらいはどうにかしたくなるよな──分かるか?」

『はい。『SEBAS』様より、ご指示を授かりました。ドローンを起動し、目標を捕捉します』

 最後の時間である。
 これですべてを終わらせ、堂々と【幽王】の前に凱旋しようじゃないか。

 ──もう一つの、真なる事実を解き明かすためにもな。


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