虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
霊体の問題 その01
レムリア
「……えっ、何があったらこうなるんだ?」
久しぶりに訪れたレムリアなのだが、そこには街ができていた。
いや、こんな状況をアイプスルで何度も経験してはいるんだ……それでも違和感がな。
《あれから開発を行い、成功しました。また霊体たちの観測にも成功しましたので……そちらを見ることができるプログラムを組み込みました》
「たしか、ブリッジの辺りを弄ってモードを切り替えれば、いいんだっけか?」
サングラスを掛けているのだが、そこを触れることで視覚に関する機能を変えられる。
さっそくモードを変更すると、先ほどまでは居なかったナニカが目の前に立っていた。
「──初めまして、ツクル殿」
「あなたは……」
「ああ、敬語は結構ですよ。前回も拝見させていただきましたので。私は……まあ、ただのガイドです、この世界のね」
「は、はあ……それならそれでいいが」
半透明の青年だ。
燕尾服を纏っており、『SEBAS』に通ずるものがある気がする。
……いや、もしかしたらここに来る前にそうなるように鍛えたのかもしれない。
「それで、どうして姿を現すことにしてくれたんだ?」
「いえいえ、それこそ誤解です。我々は霊体ゆえに正直……いえ、在り方のままであることを強要されます。私であれば、このように温厚的な態度を」
「……なるほどね、剥き出し故の弊害ってことなのか。つまり、ちゃんと接触していれば答えてくれていたと?」
「その通りです」
それができるのは、霊体の存在を感知できるヤツだけだろうに……。
たしかに目の前のガイドは悪そうではないし、警鐘もそこまで強くは鳴っていない。
ただまあ、ゼロではないのだ。
俺に完全に温厚な存在であろうと、些細な行動で俺を殺してしまうためそれは仕方ないのだけれど……信用はまだだな。
「……『SEBAS』」
《お察しの通りでしょうが、彼らもまた、旦那様を全面的に信用しているわけではございません。とある条件と引き換えに、協力をしてもらう……そういった契約です》
「契約ねぇ……俺に何かを倒せと言っても、全然戦力にはならないぞ」
「いえいえ、こちらもツクル殿のお力は耳にしております。あなたの力ではなく、腕前に我々は希望を抱いております」
腕前、つまり技量が問われているのか。
この場合は心構えとかそういう意味合いではなく、単純に器用さの方だけれど。
「……いいだろう。別世界において、俺はこれでも『巧天』を名乗っている。話はまず、聞いてからだけどな」
事情も知らないでそれを叶えるのは……神みたいな存在だけだ。
凡人たる俺は、ゆっくりと考察しないと問題の解決なんてできないさ。
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