虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
帰国祭り その01
S15W6
魔術が使えるようになっても、基本的に俺がやることに変わりはない。
大量の経験値によってそれなりの魔力を得ているのだが、それでもなお届かない膨大な消費魔力だった。
「そういう部分もまた、規格外なんだよな。効率のいい術式にしてもらったとしても、そう何度も使うことはできないんだろう」
防御、隠蔽、色物の三つを手に入れた。
……色物に関して細かい説明はできないものの、とりあえず便利さを求めた結果だ。
「──さて、何かないかな?」
ここは、いつもの拠点からはるか南南西辺りに位置する大陸。
そこにある国家ドゥーハスト王国で、商業についていろいろとやってみることにした。
前回は、三本のポーションや機械の龍などでトラブったんだっけ?
あの王女様の腹黒さを察知してしまったせいか、あまり行く気がしていなかったんだよな……いやまあ、面倒臭いから。
「だがこれも、すべては……くっ、東のためだ。慣らしていこう」
そろそろ、東のエリアを順に進んでいこうと考えている。
だがそのためには、コえなければならないモノがたくさんだ。
その一つ、そして気になる事柄の調査も含めて再びこの地に舞い戻って来た。
──まあ、前回接点を持った漁村ぐらいなら、何度も訪れていたんだけどな。
「……第二王女の帰還、ですか?」
「ああ、つい先日まで遠い遠い大陸で勉学に勤しんでいたらしいのだが、どうやら戻ってくるらしいぞ」
「その……第二王女とはどのような方なのですか? 少々気になりますね」
「ああ、分かっているお客さんだね」
商品を買う度に、少しずつ緩んでいく商人の結ばれた口。
金は余りまくっているので、魔物の素材を購入しながら情報を集めていく。
「……はあ、なるほど」
「そういうこった。兄ちゃんも商人の端くれなんだ、お偉いさんとの接点を得るためにも参加してみた方がいいんじゃねぇか?」
「お祭りですか……たしかにこの国を盛り上げるためには、必要なことですかね」
機械龍云々のせいで、貴族の一部が処理されたらしい。
そのため少し落ち込んでいた経済やら国民のテンションやらを立て直すため、第二王女の帰国を盛大に祝うことにしたんだとか。
「今から申請をすれば、まだ間に合うんじゃねぇか……ほれ、申請書だ」
「少し、考えてみましょう」
「おう! 兄ちゃんみたいに羽振りのいい商人なら、きっと面白いことをやってくれるんじゃねぇかって期待しているぞ!」
「……ははっ。その期待には、商人として応えておきたいですね」
紙を素直に受け取り、その場から去る。
さて、実際にはどうしたものか……ため息交じりにそんなことを思うのだった。
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