虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
神様談(11)
白の領域。
幻想であり、また実在する高次元の存在たちが活動するための空間において、今日も今日とで少年の姿をした■■■は、とある青年のことを想い──ニマニマと笑う。
「グフフフ、ようやく●●●●の準備ができたみたいだよ。これでついに、ツクル君に眠る力が解き放たれる!」
「……大丈夫なのか?」
もっとも最初に試練を与えた神──死神はその興奮度合いに少し引きつつ、彼の青年を心配しながらそう尋ねる。
「問題ないに決まっているよ! たとえどんな試練だろうと、ツクル君なら最終的に突破できる──なぜなら彼は、僕のお気に入りの子なんだからね!」
「本当に哀れだ。この疫病神にも嫌がられる神に、注目されるというのは」
「失礼すぎないかい!? 僕だって創造神の端くれだ……ツクル君パワーでブーストされたこの力、君で試してあげようか?」
「ただの上級神であれば、一人分の信仰でそれほどの口を叩ければ充分……だが、お前の場合は例外だからな」
少年──創造神の得ている信仰は、その密度が桁違いなのだ。
ツクルが世界に起こした影響のすべてが、創造神の認知とリンクしている。
彼が世界にその名を知られれば知られるほど、向けられる想いが創造神の糧となり力を高めていくのだ。
「今はどうなっている」
「うーん、御使いを派遣するぐらいならイケるかもしれない。まあ、ツクル君は僕のヤツ全然解放されていないから、ほぼ不可能だと思うけどね」
「よくもまあ、それでアヤツにあれこれやらせているな」
「WinWinの関係じゃないか。僕は力を与えて、ツクル君は僕に力をもたらす。互いにいい思いをしているじゃないか」
創造神の権能……その一部たる万能を生みだす力。
それを己が身へ宿し、理を覆してきたツクル──その業績は創造神へ届けられる。
「そして、彼はまた一段階上へ至る。神々の試練って、もともとはそういう目的だったんだから……わくわくするよ」
「人を神へ至らせる儀式、また願いを聞き入れるための手続き。どのような言い方をしようと、それは神の遊戯でしかないぞ」
「そこにはあらゆる神が関わる。特に、失敗した者すべてが迎える結末──死は君にとっても関わりが強いモノだよね」
死神が司るのは『死』だ。
しかし、それは魂が肉体から乖離することだけを述べているのではない。
「まあ、ツクル君の場合は君の権能が与えられて関係なくなっちゃったけどね。というか君、僕以上にツクル君の恩恵を受けているんだからさっきまでの言葉意味ないよね?」
「……さあな」
「──まあ、この話はいずれ。ツクル君が試練を終えたときにでもしようか」
不敵に笑う二柱の神。
そんな二人を見ながら◆◆◆◆は、青年を思いギュッとナニカに祈るのであった。
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