虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
アリバイ作り その04
「しくしく、シクシク……」
「泣かないでください、【仙王】様。次はツクル様に負けないよう、もっと学習すればいいのです」
「グスッ、本当に……それで勝てる?」
「…………はい」
あからさまに目を逸らしての返答に、さらに嘆く【仙王】。
そんな事態を引き起こしたリーシーは、自慢のウサ耳をへにょんと垂らしてどうすればいいか悩んでいる。
「本当にいいのですか、あのままで?」
「構わない。まだまだ成長できる才を、野放しにするわけにはいかない。『生者』が来てくれて助かった、俺では仙術で、【仙王】に勝つことができないからな」
「そう、でしたね……」
肉体を介さずに使う、ある意味普通の仙術が使えないのが『闘仙』さんだ。
故に仙丹を直接身体強化に用い、擬似的に仙術を行使する戦闘スタイル──いつもお世話になっている闘い方である。
「それで、『生者』は俺の闘い方もある程度できるのだったな。少し組み手をしてくれ」
「分かりました」
互いに仙丹を用いた技は使わず、純粋な体術で軽く闘う(俺は結界だけど)。
この場所は最初から【仙王】が造った結界の中なので、特に周囲への被害は気にせず闘うことができる。
前に【刀王】とやったときにも思ったが、動きを模倣した相手とやるときは少しずつこちらが不利になってしまう。
普通は逆なはずだが、一定水準を超えた武人の場合はこちらが『普通』となっている。
かなり精度を高めているはずなのだが、やはり時間を掛ければ掛けるほど……『闘仙』の動きは洗練され、少しずつ俺の殺し方が打撃による死亡へ変更されていく。
「──ここまでにしておこう」
「は、はい」
「俺を参考に、自分の体格に合わせられた闘い方だったな。だが、一つとして自己流の動きが混ぜられていなかった……なぜだ?」
「……それが必要となりませんでしたので」
肉弾戦を長期的にやることがないため、わざわざオリジナルの動きを考える前に、別の者の動きに変えているからだ。
そうでなくとも、アイテムか仙術を使えば『闘仙』さんの動きだけでどうにかなるし。
「そうか……結論から言えば、たしかにまだ教えられることはあるな。肉体だけを見ればまだまだ及第点を超えていないと評価できるが、今の動きでそれを真似ることができることは理解できた」
「ありがとうございます」
「新たな型、そして【仙王】では扱えない肉体を用いた仙術を行えばいいのだろう? 任せておけ、ただしそれをすべて使いこなせたかどうかはテストさせてもらうぞ?」
「はい、よろしくお願いします」
武人はみんな、同じことを言う。
要するに──自分のすべてを学んだもう一人の自分と闘いたいってことだ。
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