虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大森林 その11



 俺が把握していた侵略者の能力──

 ・相手を喰らい、肉体の制御を奪う。
 ・通常攻撃のほぼ無効化。
 ・操る肉塊の再構築。

 R15ぐらいにはなりそうな能力だが、報告された能力は……どうやらその考えすらも生温かったと理解してしまう。

「うわー……」

 それは[ログ]に記された、侵略者に関する『SEBAS』の考察入りの情報。
 喰らった能力を扱える『覇獸』の力が証明する、真実しか無い能力の数々。

「なるほど、これなら侵略者がわざわざ別の世界に来るのも納得だな」

 今の俺は侵略者の能力のみを扱える。

 侵略者そのものになるという、シリアスな創作物にありがちな汚染イベントは無い。
 安全かつ健全に、『SEBAS』の管理はそういう部分まで行き届いている。

 ──だから、侵略者の欠点デメリットは俺にはない。

「こうかな……おっ、出た出た」

 掌からイメージした物を放とうとすると、望んでいた現象が出現する。
 真っ黒な靄、それは侵略者が魔物の肉体から脱出した際に出てくるそれだ。

「これ自体が侵略者なんじゃなくて、この靄に包まれているのが侵略者なのか」

《はい。本体は核のような小さな珠状のものです。旦那様の『成仏の燐光』は、靄をも払う力によって侵略者の討伐を成されました。また、先ほどの竜巻も核を破壊された個体のみが死亡しました》

「核か……ちなみにこの靄そのものに関する情報は?」

《おそらくは侵略者たちの世界固有の靄であり、この世界において攻撃無効という名を与えられる特殊な代物です。ただし、本来の世界の住人である侵略者無くして、存在しえぬモノでもあります》

 うん、つまりチートなわけだ。

 実際、『天』関連で現れた侵略者はあまり靄を纏っていなかった。
 あれは受肉を済ませたため、靄があまり付着していない個体たちだったんだろう。

 しかし今回は違い、憑りつきたてホヤホヤなため、チートな靄が残っていた。
 なので攻撃しても靄を纏った侵略者は生き残り、別の個体を求めて彷徨うと。

「完全に侵略をすれば、肉体を得る代わりにチートな靄を失う。チートな靄に頼り続けていると、侵略できずに靄が失われて──そのまま死ぬ」

《靄はこの世界ではそう長くは持ちません。検証したところ、質によっては数時間で霧散してしまいます》

「質があるのか……なら、このまま放置してはいお仕舞い、ってわけにもいかないな」

《おそらくは、どこかに侵略者たちが生みだした門が存在します。それを破壊しない限りは、靄も存在し続けるかと》

 逆に言えば、それに成功すれば放置しても勝手に終わると。
 ──よし、解決の糸口が見えてきた!


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